ご依頼ありがとうございます
「アレンジとプレゼント、ですかぁ?」
メィリィは首を傾げる。
「そう。どうせ手が加えられちゃったし、アタシが手を出してもいいでしょ?今度持ってくるわ。アタシはオスカー。あなたの名前は?」
この騎士はオスカーというのか。
非常に奇特な人だ。
「メィリィですわ。でもオスカー様に悪いので、自分で行いますよぉ。新たなデザインも浮かびましたしぃ」
「それはそれで別で作って頂戴、アタシもこのドレスのアレンジの構想が出来ちゃったから。あと注文よ、ここからここまでとあちらと…あぁあのデザインのドレスが欲しいわね。気に入ったわ」
オスカーは十着以上のドレスのセミオーダーをする。
「そんなに、ですかぁ?」
まぁまぁの値段だ。
「今度こちらに採寸に来て頂戴」
渡されたメモにメィリィは卒倒するかと思った。
そこに書いてあったのは住所と名前、それはこの国アドガルムの王太子妃のものだっだ。
「本日はお招き頂きありがとうございますぅ」
メィリィは礼をする。
王宮のこのようなところまで入ったのは初めてだ。
通されたの先にいたのは王太子妃と王太子、とお付きの従者、メイドが一人、そしてオスカーだ。
一緒に連れてきた針子は皆緊張で震えている。
「来てくれてありがとう、ずっと会いたいと思ってたから嬉しいわ」
王太子妃のレナンは笑顔で迎え入れてくれた。
優しい笑顔は歓迎の気持ちで溢れている。
「どのようなドレスが出来るか楽しみだよ」
王太子の鋭い視線がメィリィ達を掠め、針子達よりひぃっと小さな悲鳴が上がった。
威圧感が半端ない。
「駄目よ怖がらせては。萎縮させたら来てくれなくなるわよ」
オスカーが声を掛けてくれて、少し場が落ち着く。
今日は白髪の一房を紫にしており、服装も灰色を基調としたものだ。
白い刺繍にて彩られている。
「ごめんなさいね、エリックは目つきが悪いから」
レナンのフォローが入るが、それ以前の問題だ。
そもそも王族の前で緊張しないわけがない。
「オスカー様はぁ、レナン様のデザイナーなのですか?」
メィリィの問いかけ。
このような場を準備出来るとはそういうことなのだろうか。
ただ帯剣してるのが気になる。
帯剣を許可されているのは騎士に連なるものという事だ。
しかし華美な衣装は騎士というよりも舞台役者のようで、口調といい見た目といい、派手すぎる。
「アタシはエリック様の護衛騎士よ。まぁニコラがいるし、表に出ることは少ないわ」
驚きの言葉だ。
護衛騎士になるには剣の腕もだが、護りに特化しなくてはならない。
ただ敵を倒せばいいわけではない。
守り抜くため、色々な適性と魔法を会得する必要がある。
正直オスカーからそのような威厳は感じない。
知り合いの護衛騎士を思い出すが、常にピリッとした雰囲気があった。
「ほら驚いているぞ、護衛なのに目立ってどうするつもりだ」
エリックの言葉に、メィリィもこっそり同意してしまう。
「あら、そうしたらアタシの方を狙うじゃない?人間派手な物の方に惹かれるものよ、さすがのエリックでもアタシには敵わないわ」
ふふんと誇らしげだ。
レナンがメィリィに微笑みかける。
「オスカーはお洒落が大好きで、いつもわたくしのドレスを選んでくれるのですわ。エリック様もわたくしもオスカーのセンスに助けられてますの。今回メィリィ様をお呼びしたのは妹のミューズのドレスで気になったデザインがあったからですの」
ミューズはレナンの実の妹で、メィリィとミューズは学生時代からの友人だ。
学生の頃から様々なデザインの服をミューズともう一人の友人に着てもらった思い出がある。
「アタシも見せてもらったのよ。ミューズ様へのデザインは可愛らしいものばかりだけど、時折ビビッとしたアクセントがあったわ。そこを活かしつつレナン様には少し大人っぽいデザインがいいと思うの」
メィリィは自分のドレスに目を留めてもらえるとは嬉しいと感じる。
テーブルの上にこの前オスカーが選んだドレスのデザイン画を広げた。
「こちらを少しアレンジさせてもらってぇ、レナン様仕様にするんですねぇ?」
「そうよ、普段着として着るから数が欲しいわね。でもデザインが古くならないように程々の枚数でいいわ。必要な時には都度呼ばせてもらうから」
オスカーがデザイン画の一つを見つめる。
「いいわね、こういうデザイン。アタシの騎士服も頼もうかしら」
うっとりと呟くオスカーに思わず見惚れる。
口調はどうあれ、オスカーも美麗な部類だ。
口さえ閉じてれば普通にイケメンなのに。
「まずはレナン様のドレスですぅ。皆、採寸をお願いしますねぇ」
男衆には外に出てもらい、レナンにはシンプルなワンピースに着替えてもらって採寸を始めた。
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