第3話

「ベルローズ?どうしたの?こんなに早く帰ってくるなんて」


「アマリエ!お前が付いていながらどういうことだ!」


 両親はさっそくお姉様を詰っているわ。馬鹿かしら。


「黙って!そう言うのは後でいいから!お姉様、少し私の部屋に来てもらえませんか」


「べ、ベルちゃん!?」


 私が両親に強い口調で言うもので、お母様なんて顔を青くした。私ってば逆らわないイイコだったからね。

 やっぱり少し強引にお姉様の手を引いて自室へ連れて行く。酷い部屋、お姉様から奪ったものが乱雑に散らかっている。お姉様が持っていた時は何もかも煌めいて見えたのに、自分の物になると途端に興味を失うんだから、馬鹿ローズはほんと病気だわ。


「お姉様……今まで本当にすみませんでした。どれがお姉様の物か分からないくらいお姉様から色々取り上げてしまいました。お願いです、お姉様の物をお持ちいただけませんか……恥ずかしながら私ではもう、どれがどれだか……」


「ベルローズ、あなた本当にどうしたの……あなたらしくない……」


「中の人間が変わったと言えば納得してもらえますか?私、もうお姉様を苦しめたくない。そして幸せになって欲しいんです。勿論私も幸せになりたいんです!」


 お姉様はまだ疑わし気な目をしていますが、ひとまず自分の物は回収してくださるようでした。


「……全部持っていくと、貴方の部屋はがらんどうになってしまうかもしれませんよ?」


「構いません!……でもがらんどうにはならないと思いますよ、あの両親は私に色々買い与えてくださりましたから……」


「そうね……」


 お姉様は遠慮がちに私の部屋を物色し始めました。ああ、まどろっこしい!!


「これも、これも!これもですわ!ああ、誰か手を貸して!お姉様の部屋に運んで欲しいの!」


 数人のメイドがやってくる。両親はハラハラしながら廊下から様子を見ているだけだ。


「これも、これもよ!これも私のではないわ」


「べ、ベルローズ、そんなにいっぱい要らないわ……」


「いえ!10年以上もお姉様から奪い続けていたのです!それくらいになるのは当然ですわ!ご遠慮などなさらずに!」


 ぽいぽいと積み上げると本当にいっぱいあって、もう自分の罪深さに愕然とする。穴でも掘って埋まりたいわ。


「べ、ベル、ベルローズ!本当に、本当にもういいから!クロゼットにそんなにドレスは入りませんから!」


「ではお預かりしておきます!空いたら取りに来てくださいませね!」


「わ、わかりました……」


 ふう……少しほっとしたわ。壊してしまったものや捨ててしまったものも多く、土下座してわびたい。いや、土下座しよう……そう思った時、メイドの一人が来客を告げる。


「ジョルジュ・トワイト公爵令息がお見えです」


「お通しして!」


 あ、お父様でもお姉様でもないのに、答えてしまったわ。

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