第9話

 「ねえ、僕にも、マリナって子が成仏するの、手伝わせて」


 「えっ?」


 「なんとなく、今その子がどういう気持ちでいるのか、何をしてほしいのか、分かる気がする」


 「彼女が救われるなら、いいけど」


 「でも、もし救えたら、この町を元に戻してあげて。きっと、昔とは違うはずだから」


 「それは、どうかしら」


 「その証明をするために、かずのりとともやも一緒に連れて行ってほしい。二人の力も借りたいから」


 「わかった」


 「あ、でもそしたらまず二人を探さないと」


 「大丈夫。もうあなたの後ろにいるから」


 あずさはそういって、僕の後ろを指さした。そこには二つの黒い人影が立っていた。


 「わっ」


 「言ったでしょ。その子たちは認識してほしい人を探してさまようの。あなた、よっぽど二人に好かれてたんだ」


 そのあと、彼女は不思議な力でかずのりとともやを元の人間の姿に戻してくれた。二人は僕を見た時、「せいじ!」と言って抱き着いてきた。久しぶりに触った二人の肌は、とても暖かかった。


 感動の再会を終えると、僕はこの町で起きていることと、守護霊あずさについて説明した。突拍子のない話に最初は困惑したけど、喜んで僕たちの頼みを聞き入れてくれた。


 「おうよ。この町の命運がかかってんだろ?」とかずのり。


 「幽霊なんて信じないけど、そんな子は見捨てられないな」とともや。


 「よし、あずさ。マリナの霊のところに案内して」


 「わかった。気配から探る」


 彼女は霊気をたよりに、マリナの場所を探した。常にこの町じゅうを移動しているマリナの霊は、中々見つからなかった。でも、あずさは必死であちこちを僕たちをつれて歩き回った。


 しばらく探して、マリナの霊が山の方にある小学校の裏庭で見つかった。彼女の霊はまるで黒い人影のようになっていた。見ただけでは誰なのか分からないし、ときどき小さく「無視しないで」と言っている。


 「マリナ? マリナ? あなたを成仏させたい、お願い、気づいて」


 あずさはこう呼びかけたが、まるで応答がない。黒い人影のように、認識されていないことを嘆いているのか。


 「無視しないで、無視しないで」


 「やっぱり、聞いてくれない」あずさは涙ながらに言った。


 そんな彼女を見て、僕はマリナの霊に近づいた。


 僕はこの子のことを知らない。彼女も知らない。けど


 「無視しないで、無視しないで、遊んで」


 「うん、遊ぼう」


 僕はこうささやいた。

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