ついついイジメたくなってしまうタイプ
その少女は<れいな>と呼ばれていて、とてもおとなしく、いつも怯えたような表情をしていて、ついついイジメたくなってしまうタイプだった。
もう、十回ではきかない回数、れいなは
れいなにとっては、特に嫌な客の一人でもあったようだ。自分を見る目が陰湿で、行為もしつこく、時に苦しいことを強いてきたリもするからである。無理な体勢で首を圧迫され、意識が遠のいたことも何度もあった。にも拘らず、金払いが良いので、れいなが所属している店側としては大事な上得意でもあった。
「れいなちゃ~ん、今日も可愛いねえ」
ねっとりと絡みつくような男の声に、少女の体は強張った。とは言え、ここで抵抗などすれば事務所兼待機室に戻ってから何をされるか分かったものではない。それを思えば、目の前のこの男に逆らわずに言いなりになるのが一番、苦痛が少なく済んだ。
れいなは、伊藤玲那は、もうすぐ十一歳になるところだった。既に一年近くこの仕事を続けて、いや、続けさせられて、体の方はすっかり慣れていた筈だった。それでも玲那にとってこの仕事は苦痛以外の何物でもなかった。フィクションであれば無理矢理であってもいずれは甘い感覚にあどけない少女でさえ蕩けさせられるという演出があるのだろうが、少なくとも玲那にとってはそんなものは欠片もなかった。ただただ不快で、苦痛で、ゴミのように捨ててしまいたい行為でしかなかった。
ただただ痛みしかなく、体への愛撫もやはり生理的嫌悪感しかもたらさない。元より、健康な成人女性であっても行為の際に痛みを伴うという例は確かにある。なので、彼女の体は、こういうことについて適性がない可能性があった。何より精神的に玲那はその行為を心底嫌悪していた。
それを今日も我慢して、心を閉ざして何も考えないようにすることで耐え凌いだ。演技などする余地もない。また、彼女を組み敷いてくる客たちは、いつまで経っても慣れずにぎこちない態度を取る彼女を重宝がった。
「いい、いいよ、れいなちゃん。いつ見ても初々しい反応だねえ!」
克光も、スレることのない彼女を愛おしいとさえ思っていた。ただ同時に、タレントのスカウト的なことをしている者としての見方として、アイドルという形でこの少女が活きるかと言われればそれはないとも克光は思っていた。
むしろこの少女は、華やかなところでは活きない。こうやって惨めたらしく男に組み敷かれて涙を流す姿こそがこの少女の価値だと感じていたのである。
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