第15話 ヒロインの憂鬱
本来であれば生徒の外出が許されない深夜。
私――トレナ・サンデールはとある先生の研究室を訪ねた。
学園側からの許可は得ていない。
先生の私情によって呼び出されたのだから。
「やあ、よく来てくれたね」
私を呼んだのは特待生を決める権力を持ったギャスパー先生だった。
「ここへ来たということは……私の提案を受け入れてくれると判断していいのだな?」
「…………」
小さく頷くことで返事をする。
そんな私の反応を楽しむように、先生は自分の提案を確認するようにもう一度説明する。
――私は幼い頃から王都にある教会で育てられた。
生まれつき魔力が人よりも多く、また【火】と【地】のふたつの属性を有する特殊な体質だったこともあり、学園から特待生として入学しないかと誘いを受ける。
私は喜んだ。
教会には私と同じ境遇の子たちも多かったので、私が頑張ればこれからも特待生としてお金を気にせず学園に通える可能性があるからだ。
合格通知を受け取り、みんなから祝福されて学園へと向かったが……私を待っていたのは厳しい現実だった。
先生は私に特待生の制度を作った理由を教えてくれた。
『あの教会におる子どもたち……なかなか粒ぞろいだからな』
最初は何を言っているのか理解できなかった――けど、彼が教会の子どもたちを好きにするため特待生という制度を作ったと知らされた時、私は絶望した。
彼は最初から私たちのように立場の弱い人間を食い物にするつもりだったのだ。
私はその最初のひとり目。
ただ、この四年間を我慢すれば名門の王立学園を卒業したという事実は手に入る。
そうすれば一生困るようなことはないだろう。
――でも、そうなったらこれから始まるおぞましい出来事を他の子たちも経験しなくてはいけなくなる。
私は……どうすればいいのか。
どうしようもなくなって、ただただ先生の指示に従うだけとなった――その時だった。
突然、部屋のドアをノックする音が。
「なっ!?」
ギャスパー先生も驚いているということは、予定にない来客なのだろう。
それにこの怯えたような反応……もしかしたら、先生はこれからしようとしている内容について学園側に一切報告をしていないのではないか。
もしかしたら助かるかもしれない。
淡い希望を抱くが、やってきたのは――
「ギャスパー先生、少しお話しできませんでしょうか」
明らかに生徒の声だった。
教師ではないと知り、私は再び肩を落とす。
一方、ギャスパー先生は同僚でないと分かって安堵したのか、声を張って校則違反をしている生徒を叱り飛ばす。
「な、何を言っている! 生徒の外出は禁止されている時間だぞ!」
「では失礼します」
「おい! 話を最後まで――」
話しの途中で部屋の扉が吹っ飛び、ギャスパー先生もそれに巻き込まれて壁に叩きつけられる。
「えっ?」
一瞬、何が起きたか理解できなかった。
あれだけの威力なら魔法を使った?
いや、魔力は一切感じなかった。
それに
彼は純粋に……扉を殴っただけだ。
そんなことができる生徒って言ったら数少ない。
「まさか……」
振り返ると、そこに立っていたのは――私を不良生徒から助けてくれたあの人の姿が。
「おっと、思いのほか脆かったな」
エナード・ガディウス。
どうして彼がここに!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます