【短編】ウォーリを探せ!

竹輪剛志

Ⅰウォーリについて

 「ウォーリを探せ」は、世界的に有名な児童書である。その内容は、世界各地の景色に大勢の人がいて、その中から特徴的な服装をしたウォーリを探し出すという簡単なものだ。

 眼鏡をして、赤と白の縞々模様の服。そして一本の立派な杖を持っている。これが、万人の思い描くウォーリの姿である。おそらく、そこそこ発展している街に出向いて「これ、誰ですか?」と人々に先の特徴を持った人物の画像を見せれば殆どの者が「ウォーリ」と答えるだろう。

 さて、そんなウォーリが実在している人物であるのはご存じだろうか?

 ウォーリ・クルトニス・グロリア。二千年前に、グロリア王国に生まれた王子である。しかし、王族といえど九男であった彼の継承権は無いに等しく、それを知っていた彼の母親も、彼が次期王になるのを諦め、戦士を意味するウォーリアーから取って、「ウォーリ」と名付けたという。

 しかし、彼は戦士にはならなかった。

 魔術史をそれなりに学んだ者なら、彼の名を何らかの魔導書で見たことがあるだろう。

 炎魔術、水魔術、風魔術、土魔術、光魔術、闇魔術、錬金術、占星術。古今東西あらゆる魔導書、とりわけ古い者に多く、彼の名は記されている。

 それだけなら、「ウォーリを探せ」のモデルとなった人物は古の時代の偉大な魔術師だったという話で済む。

 そういう話に済まないからこの文が書かれているのだ。では、何がおかしいのか。彼の名は、三千年間あらゆる場所の、数々の魔導書に名が乗り続けるのだ。それは直近十年にもせまり、一番新しい彼の名が冠された魔導書は八年前の物だ。

 そして、恐ろしいことに、それらの魔導書を出した者は例外なく狂気に堕ちて、失踪する。

 ウォーリ・クルトニス・グロリアとは何者なのか、それは同一人物なのか、はたまたウォーリとは世襲していく名なのか。何故彼と出会った者は発狂して存在を消すのか。私はその謎を追うために、研究を続けている。

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