夢羊の夢喰い日記 〜僕だけの特別なユニーク魔法で依頼主を幸せに〜
うらら
異世界での生活
第1話 さよなら、そしてこんにちは
友達と遊び、勉学に励み、日常を過ごすそんな毎日を過ごしていた。
ーーだが、次第にその平和な日常は崩れていく。
段々と眠る時間が長くなっていったのだ。その時は、優樹がただ眠いだけと思い誰も気にもとめなかった。
ーーしかし、それが間違いだった。
両親もただ眠るのが好きなだけだと思って放置していたが、睡眠時間が10時間、12時間、14時間と長くなっていったのだ。
流石に不安に思った両親は、優樹を病院へ連れて行くことに。
ーーそこで医者から酷な宣告を受けることに。
医者から優樹は、数億人に一人がかかる
現在、治療法が見つかっておらず医者たちにもどうすることもできない。
医者からの宣告に両親は、二人揃って泣き崩れてしまう。
優樹も両親と同じように泣き崩れると思いきや、あまりショックには思っていないのかケロッとしていた。
平気そうな顔をしている優樹に、両親はどうして平気なのか理由を聞いてみると「僕、眠ることが寝ることが好きだから……」と言うのだ。
残酷な現状にも臆さず、なんともポジティブに捉えているものだ。逆にそれが良かったのか、残りの日々をいつも通り楽しく過ごすことができた。
ーーそれこそ、優樹にとって最大の幸運な事だった。
残りの人生は暗く過ごすより、やはり楽しんでこそだ。
それからも優樹は、起きている間は普通に過ごした。学校に行き、友達と遊ぶ、本当にいつも通りだ。
しかし、無情にも平和な日常は終わりを迎えようとしていた。
優樹の睡眠時間はますます増えていったのだ。一日中眠る時もあれば、一週間眠り続けることもあった。
そのせいで当然起きる時間も少なくなっていった。そのため優樹は、毎日を大切に大切に過ごした。
ーーそして、優樹は目を覚まさなくなった……
◇ ◇ ◇ ◇
暗闇に包まれた夢の中?で優樹は思考する。
とうとう僕は死んでしまったのか……お父さんとお母さんともっと一緒に過ごしたかったな〜。もう一度起きることができるのならば、この気持ちを二人に伝えたかった。
すると、優樹の純粋な思いが届いたのか、暗闇の中に一筋の光が差す。
もしかして、神様が僕に最後のチャンスを、もう一度起きることが出来るチャンスをくれたのではと思い光に手を伸ばす。
ーーもふっ……
ん? なんだこの感触?
もう一度手を伸ばして光を触ってみるが、やはり変わらない感触が手に伝わってくる。まるで、綿菓子を触っているような幸せな感触だ。
ーーもふっ、もふっ
やはり変わらない感触。
それにしても、この感触どこかで知っている気が……
そんなことを考えていると、なぜかゴゴゴと空間全体が揺れ出した。怖くなった優樹は、必死になって光のもふもふに力一杯しがみつく。
ーーメェエエエエエーーーー!!!
この声を聞いて確信した。このもふもふの感触、中学の時に両親と行った動物園で触った羊の感触だ!! でも、なんで夢の中に羊が!?
優樹がこの不思議な羊のことを考えている間も空間はグラグラと揺れている。すると、しがみついている羊がのしのしと動き出した。
次第にゴォーゴォーと風を切る様な音が聞こえて来る。この羊はどこかに向けて猛スピードで走っているようだ。
ーーわぁあああーー!!!
優振り落とされない様に優樹は、必死にしがみつく。どうしてかは分からないが捕まった方がいいと、優樹の直感がそう告げるのだ。
それにしても、ここまで必死になったのはいつぶりだろうか。最近は病気のこともあったし、周りは僕のことを心配してあまり無茶はさせてくれなかったからなぁ。
羊は優樹をよそに、先ほどとは比べ物にならない速さでどんどんとスピードを上げていく。例えるなら、電車の外で必死にしがみついている感じだ。
次第に掴めているのかも分からず、耳には音も聞こえず、あたりは暗闇のため、どうなっているのかも分からない。
羊がようやく落ち着いた時には、目も、鼻も、耳も、何もかも効かなくなっていた。
その状況から優樹はとうとう死んだしまったのかと思った。しかし、先ほどの光とは別の温かい光が優樹に差し込む。
気力もなく、五感も効かない優樹にはもう何もできない。
なすがままに身を任せていると。なんと、光の方から向かってくるではないか。
次第に光は近づいていきて、ついに優樹は光に包みこまれる。
ーーおぎゃ〜、おぎゃ〜
誰かの泣き声が聞こえてくる、おそらく赤ん坊の泣き声だろう。しかし、なぜ赤ん坊の泣き声が?
「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」
もしかしてこの泣き声って……
「こんにちわ、私の赤ちゃん」
ぼく、あかちゃんになってる!?
読んでくださりありがとうございます。
少しでも面白いと思われましたら、評価のほどよろしくお願いします。
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