第6話 彩雲を窓辺にみたら

結局、犀花は、次の日の授業の準備を一人で行う事になった。こんな事は、よくあったし、あまり、早く自宅に帰りたくないので、嫌がる事もなく、引き受けたいた。後片付けを行い、明日の授業に使う道具を1人で、準備していると日暮れは、早く、校舎に夕闇が迫っていた。

「結局、暗くなってしまう」

昼間は、賑やかな校舎も、日が暮れてくると不気味な雰囲気が漂う。前日にあんな事があると、1人でいるのが、少し、不安になる。

「護身符を与えてもね」

ふと、顔を上げると真っ黒な猫が、窓の隙間から、顔を覗かせている所だった。

「何を考えて、ばら撒いたかは、知らないけど」

黒猫は、窓の隙間から、容易く教室に入ってきた。

「自分のした事がわかっているの?」

そう言うと、フワッと床に舞い降りる。

「あなたは、何?」

犀花は、後ろに後ずさると、猫は、構わず、犀花の足元に、近づいてくる。

「大人しくするように、言われなかったの」

猫の背中の毛は、逆立ち怒っている様だった。

「あなたの言っている事は、わからない」

猫は、犀花に、飛びかかろうと牙を剥いていた。

「あなたは、本来なら私の使い魔になる筈でしょう?」

殺気立つ猫に、構わず、犀花は、言った。

「誰の使い魔?」

話しかける猫に臆する事なく、犀花は、明日の準備を終え、自分の荷物を片付け始めた。

「私が、護符を渡す事を嫌がる人は、何人もいるけど、使い魔に言われるとは、思わなかった」

犀花は、カバンの中から、茶色い皮の袋を取り出した。

「簡単なルーン遊びよ。使い魔を持つ呪い手が、身近にいるとは思わなかったけど」

犀花は、茶色い袋から、一つの小石を取り出すと、黒猫の額に投げつけ、呪文を飛ばした。

「不味い!マスター」

背後から、昨夜の声が響き、振り向くと教室の壁に大きな蜘蛛の影が浮かぶ上がっていた。

「今の力では、無理だ!」

猫の額めがけて飛んだ小石は、軽くかわされ、床に落ちて弾いていった。飛び上がる黒猫は、跳ね上がり、瞬く間の、巨大な三つ目の猫の化け物になった。

「無駄に、使うではない」

黒猫の口は、耳まで、裂け、口の中からは、生臭い息が上がっていた。

「マスター」

黒猫が、飛びかかろうとした時に、犀花との間に、黒い柱が突き刺さった。大きな蜘蛛の足だった。

「何なの!」

黒猫の存在より、大きな蜘蛛の存在だった。自分をマスターと呼び、庇うように間に入ってきたのだ。

「あなたの今の力では、叶わない。早く、逃げて」

犀花は、あまり昆虫は、得意ではない。が、全身黒光する苦手な生き物が現れ、犀花を助けている。

「どう言う事?」

逃げる事を忘れ、立ちすくんでいると、

「先急ぐなよ」

昨夜の少年が、蜘蛛の足元に立っていた。

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