第2話温かさ

ジークは家に帰った。そしてその違和感と若干の期待の正体を暴く。いい香りのするキッチンの方へ行く。そしてそこにその正体は居た。平常を保っている様に見えるが内心はかなり動揺している。鍵、閉め忘れたっけ?そして「そいつ」はこちらの存在に気が付くや否や声を発する。

「おかえりなさい!」すかさずジークも声を出す。

「誰だ貴様!どうやって侵入した!?何故料理を作っている!」そしてそいつはこちらに向かってきた。

「何故料理を作っているかというと、貴方の胃袋をキャッチするためですね。」

「ほう・・・いい度胸だ。で・・・。」

「転移魔法で侵入しました。」

「ま・・・魔法が使えるのか?まさかお前!」

「私は小悪魔ちゃんです!」にっこりと笑顔になる。かわいい。

ジークは困り果てた。装備は兵舎に置いてきた。例え自分がどんなに筋力があったとしても魔法の前には無力である。ここは一つ、大人しく要求を飲むしか・・・。自称小悪魔ちゃんは話し続ける。

「名前はナターシャです。これからよろしく!」容姿は美人といったところだった。

「お・・・お前の要求は何だ!?」普段は冷徹を演じているだけであってこの男は特別ではない。焦りが見える。不思議そうな顔でナターシャは答える。

「別に?要求とかそういうのはないですけど?あ、強いて言えば・・・。」ジークは息を呑む。

「私の前では仮面を外してありのままの貴方でいて欲しいな~。ダメ?」深いため息を吐くジーク。

「汗臭いからシャワー浴びてきてね。それからご飯にしましょ。今日はシチューよ♡」

「え・・・ああ、そうするよ。」ジークはシャワールームに向かう。そしてシャワーを浴びながら考える。

一体何が目的なのだろうか?どんな手を使ってくるのだろうか?色々考えてみたがどうも頭が回らない。

既に大事なものを奪われた気分だ。だが、そんな事はない。別に悪魔だがらといって特別どうって事はない。

人間と大差ない連中なんだから恐れる必要はない。そういえば悪魔は人間の精気を吸うとか何とか。彼女の声が聞こえる。

「何時まで浴びてるの?もうっ、ご飯冷めちゃうよ。」

あんなに可愛い彼女か何かの陰謀を企んでいるとは正直、思いたくない。そもそも、自分は悪魔狩りとして恐れられているが奴らが嫌いなわけでは無い。仕事だからやっているだけであって、仮に一緒に暮らせたら面白いとも思っている。個人的恨みは無い。ただ、国家の方針がそうさせているだけなのだ。だが、仮にも聖騎士。悪魔と生活を共にしている等とバレようものなら・・・困ったものだ。食卓にはおいしそうな料理が並べられていた。一人で生活しているとそんなに豪華なものを作ったり、品数を増やしたりしない。

「ささ、食べて食べて。」目を輝かせてそう言った。

「う・・・旨い・・・」

味が特別良い訳では無い。何かこう、懐かしい味わいだった。最初に脳裏を過った毒が入っているかもしれないという事などとっくに忘れていた。

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