聖騎士の愛人
Γケイジ
第1話発端
雄叫びと肉が断たれる音が響き渡る、ここは森。この世界には多くの類人が住んでいる。そして今、「人間」といわれる種族と「悪魔」と呼ばれる二つの人類が紛争状態にあった。まだまだ未開のこの世界、武器は剣や槍から銃へと移って行っている。魔法から科学への進化だ。決して魔法が存在しない訳では無い。「人間」には向いていなかった。そんな変わりゆく時代を生きる一人の聖騎士を生業とする男の物語である。
「死ね!この悪魔め!げひゃひゃひゃ!」狂気の声が森に広がる。
「い・・・命だけは!命だけは勘弁を!」血しぶきが大地を濡らす。
聖騎士団は森で生活する悪魔と交戦状態にあった。国家の領土を広げるのに手っ取り早いのは未開の森を焼き払う事だ。その事前調査といったところだ。聖騎士団は人間の国家唯一の接近攻撃を行う部隊。人間の中でも極めて高い戦闘能力をもった人のみで構成されている。要はエリートだ。とは言っても狂ったような奴も居る。そいつがこの男、ジーク。勝利の名を受けたこの男は騎士団の中でも異彩を放つ存在だ。その性格は冷徹で任務を必ずこなす男と言われている。例え相手が女、子供ですら容赦しないクレイジーな野郎だ。
騎士団と悪魔の大規模衝突が発生した時の事。
悪魔の女「い・・・嫌、殺さないで・・・。」
一般兵は銃を構えるがその引き金を引けずにいる。普通はそうだ。例え悪魔でも外見は人間と大差ない。
民族が違うと言うだけで殺さねばならない事を受け入れられないものだ。兵士が構えを解こうとしたその時である。その女はやって来た騎士の男によって首をはねられ絶命した。そしてその男はこう言った。
男「危ない、気を抜くな。女と言えど悪魔、気を抜けばその命すぐに落とすぞ。」
兵士は思ったことだろう。一体どれ程の忠誠を国に誓ったのだろうか?可哀そうという感情はないのだろうかと。それは未知である。この男の私生活を知る者は非常に少ない。大抵、休暇が取れると家に引きこもって出てこない。仲間と酒を飲みに行ったり、女遊びをしたりなんてしない。やはり未知である。時は戻り現在。
黙々と悪魔を殺すジークのおかげかそれらは恐れをなし散り散りに逃げた。人間の勝利である。
騎士A「ははっクズどもが!さっさとくたばりやがれってんだ!」その言葉に続き騎士たちは次々と恨みつらみを吐く。そんな中、団長がジークに話す。
団長「今回もジーク様様だよ。君のお陰でこの部隊が成り立っているようなものだ。これからも宜しくな?」
ジークは敬礼を以って団長の意思に答えた。
騎士団は任務の時だけ徴収される部隊である。普段はその多額の報酬で遊び歩いているものが多い。
今回も調査任務終了を以って皆ばらばらの帰路に就く。人間達は幾つものトーチカと大きな一つの城が守る街に住んでいる。ジークも例外では無い。彼は一人で住むには少しと言わず大きな家に住んでいる。そこに寂しそうな背中をした男が帰る。だが、この男は大事な事に気が付いていなかった。誰もいないはずの家に明かりが灯っているではないか。更にあろうことか旨そうな料理の香りまでする。間違いない、誰かが侵入したに違いない。しかし、何とも旨そうな料理の香りだ。何処か懐かしさを覚えるジーク。ジークは言い聞かせる。これは幻の類であり、現実は残酷であると。しかし現実とは奇なるもの。少しずつ物語が進みつつあるようだ。
-------------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます