第14話 宴、始まる

「んまぁ~!」


 感激の声を上げる鈴子。

 というのも、宴の会場が昔絵本で読んだシンデレラの舞踏会のようだったからである。


「すごいわねぇ~、きらびやかな空間、美味しそうな匂い、露出多めの綺麗な子たち…は踊り子さんかしら?」


 各国の要人たちは先にテーブルについて食事を楽しんでいるようだった。

 鈴子が会場に入ったことが伝えられたのか、流れていた音楽がゆっくりと消えてゆく。同時に、くつろいでいた要人たちに緊張が走る。


「皆様お待たせいたしました。異世界からの使者を皆様に紹介いたします」

 声を張り上げているのはアマデス司教だった。その後ろにはノーウィン司祭。

「大いなる預言者、安西鈴子殿です!」

 大袈裟ではあるが、鈴子は裾をちょいと摘み上げ、令嬢のように膝を折って頭を下げてみた。ざわつく要人たち。


「予言者?」

「賢者ではないのか?」

「いや、私は勇者だと聞いていたが」

「失敗だったのか?」

「どうなっているんだ」

 パッと見の印象なのだろうが、やはり反応は芳しくない。


 まったく、どこに行っても男社会なのね。


 鈴子は半ば呆れながら、国王に目配せをした。


「各国からお越しの皆さま!」

 国王ハースが広間に響き渡る声で呼びかける。広間がシン、と静まり返った。

「ご承知の通り、召喚魔法というのは完全なる成功を収められるものではありません。私たちは賢者、もしくは勇者を呼ぶはずでした。しかし、実際はこちらにおられる鈴子殿がやってこられた。彼女は予言者であり、そういった意味では我々を正しい道へと導いてくれる存在であると言ってもよいのかもしれません。私は国王として、また、ここにお集まりいただいた各国の代表者として、今、ここで皆様に紹介いたします」


 鈴子は国王ハースの隣までつかつかと進み、要人たちの顔を一人ずつ見遣った。


「あなた」

 要人の一人を指し、告げる。


「ここに来る前、奥様と喧嘩なさったでしょ」

「……え?」

 名指しされた男はきょろきょろと落ち着かない様子で鈴子を見た。


「それと…あなた」

 さっきの男の、二人向こう。


「さっさとプロポーズなさい。他の男に取られますよ」

「なっ!」


 ギクリと肩を震わせ、顔を真っ赤にする。

 こうして鈴子は、予言者デビューした。

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