第6話 会議開始

 その広間には馬鹿でかいテーブルが置いてあった。

 中央奥に、国王ハース。そこから右側に司教アマデス、司祭ノーウィン、その向かいにトルボ元帥、フィンノ将官が控えている。椅子には腰掛けていないが、さっき儀式を行った多くの魔術師や僧侶たちもその行方を見守っていた。


 案内された鈴子は、いかつい顔をした男たちと対峙するように、国王の対面に座る。そしてなぜかさっきまでいなかった若い男が静子の後ろに立っていた。


「では、まず自己紹介しましょうね。誰が誰かわからないとやりづらいし」


 勝手に話を進めているのはもちろん鈴子である。一瞬場がざわついたが、国王がそれを制した。

「もっともだ。では私から。私はここ、ミリールの国王、ハース三世である」

「あら、三世なの!」

 鈴子が手をパン、と打ち、嬉しそうに言った。某アニメを思い出しただけである。


「司教アマデス、司祭ノーウィン、そっちがトルボ元帥とフィンノ将官だ」

 本当に簡単な自己紹介である。

「難しい名前が多いわね、あまっちにウィン、トルさんフィンさんね」

 頑張って頭に叩き込む努力をする。


「私は鈴子。安西鈴子です。鈴ちゃんって呼んで頂戴ね。年は、まぁ、女性にそんなこと聞かないでよってことで非公開ね。あはは。あ、それとこの子はゼンちゃん。よろしくね」

 紹介されたゼンがチラ、と五人を一瞥した。


 あの後、鈴子に服装を注意され、肌の露出が少ないものに着替えさせられている。そのせいか見た目では人間と変わらないくらいになっていた。


「その…ゼンちゃん、とやらは一体」

 元帥が警戒の目を向けるも、鈴子はあっけらかんと返す。

「まぁ、息子みたいなもんかしらね~」

 ヤカンの魔人が実は精霊であるということも分かっていないし、大体、魔人と精霊の違いだって知らない。願いを叶えてくれたりするのかしら、うふふ、程度の理解だ。


「息子…ですか」

 さっき魔法陣から出てきたばかりの人間が、なぜ突然息子のようなものを従えているのか、先にいた五人に知る由もないのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る