ババア召喚 ~おばちゃんと考える世界の在り方~
にわ冬莉
第一章
第1話 ババア召喚
魔法陣が光る。
術は成功している。
周りを取り囲む魔術師、僧侶たちが安堵の息を吐いた。
あとは予定通り、賢者が召喚されるのを待つばかりだ。
いや、もしかしたら賢者ではなく、勇者かもしれない。
何しろ世界中から集まった腕利きの魔術師たちが丹精込めて描いた魔法陣だ。
この世を救うべく、祈りを込めた魔法陣なのだ。絶対に成功する!
「来る!」
国王ハースが神妙な面持ちで魔法陣の中央を凝視している。一体どんな人物が召喚されるのか。果たしてこの国を…世界を揺るがす亜種との大戦に勝てるだけの要素を持ち合わせているのか。すべてはこの儀式にかかっているのだ。何としても、役に立つ人物を召喚しなければ……。
この儀式には魔法石が必要となる。
なかなか手に入れることのできない魔法石を大量に集め、使い切ってしまったのだ。失敗は許されない。
パアアアアアッ
光は最高潮に達し、魔法陣の中には人の影のようなものが浮かび上がる。
「おおお、」
どよめきが起こる。
そこには間違いなく、誰かがいる。
成功したのだ!
「おおお……お、お?」
しかし、光が収まるにつれどよめきが疑問形に変わっていく。
これは一体…、
国王ハースは口をあんぐりと開けたまま、召喚された人物から目を離せずにいた。
グレーのズボンにグレーのジャンバー、頭には三角巾を巻いているが、三角巾越しにも頭のもじゃもじゃが見て取れる。手に持っているのはモップ。ずんぐりむっくりな体系と、人のよさそうな人相…。
「あらやだ、どうなってんの?」
おばちゃんは右手を頬にあてて、そう言ったのである。
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