再生の音

生まれ変わる瞬間


古い服を脱いで、新しい服に着替えて、そして町に出よう。


町は、静かな、面影の、陰りのあるビルディング


幻に包まれた、胎児の見る夢。


戯れる、戯れ続ける、始まりの場所


公園。


砂場の記憶。


夕暮れの赤い樹の影、モダンな白いモニュメント


影が揺れている。


遅くまで遊んだ。


ブランコが風に揺れ、静かな音をたてて、揺れている。


再生のメロディ。


からんからんと鳴り響く、鐘の音が遠くから聞こえてくる。


帰りたい。


胎児の見る夢に。


絶歌は木霊する。


夕暮れの影が、長く伸びる。それは、生まれ変わっていく日々の、先にある、記憶。


黄昏に染まっていく。


生命が、生命が、繰り返し、歌を歌う。


リフレインする喜びと悲しみ。


何を代弁しているのだろうか?


答えは無意識に共鳴する痛み。


それから、風の鳴る、静かな公園。


帰れない。


家路を急ぐ群衆が、通りをすり抜けていく。


誰もいない公園。


でも、口笛は、寂しげに、黄昏を越えていく。


もう、戻れない。


孤独の予感の中で、口笛は、鳴っている。


再生への願いを込めて、


歌は終わる。


それから、風の音だけが、記憶に残る。


故郷は遠い。フォスターの歌のように。


僕は公園に独り。砂場で遊んでいる。


いつか歌がまた、聞こえてくるまで、風の音だけを聴いている。


孤独の死。


そして、再生の予感。


何もかもが、どうでもよくなっても、手をのばそう。


きっと、届く。君の手をにぎる、その確かな温かさが、心に火を灯す。


足音。


ほら、足音はする。


ざわざわと、全身をかき乱すような情熱の音。


ビート。


そこから始まる。


ビート。

ビート。


そこから始めるのだ。

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