(四)-3(了)
地検の男は紙を内ポケットにしまいながら松ヶ浦のデスクの前までやってきて静かにそう言った。
そして男が右手を顔の位置まで挙げ、次にその手を前に倒した。すると背広の男たちが一斉に部屋の中だけでなく他の部屋に散っていき、室内の創作を始めた。
取り決めについてバラしたのは一体誰なのか。そればかりが松ヶ浦の頭の中を駆け巡った。そして歯ぎしりをしながら目の前の事態にただ立ちつくしかなかった。
その頃、仕事に一区切りをつけた長森渚が、ある墓地の「長森家之墓」の前で手を合わせていた。
「父さん、母さん、これで一矢報いやったよ……」
手を合わせながら、渚はそう呟いた。
細い線香の煙が一筋、空へ向かって上っていった。
(了)
火消し 【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名 @HarunaTsukushi
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