(二)-18

 これは昔からそうだった。以前、業界団体の雑誌『月刊土木建設』の記者が元加治建設を取材したいので八尾に紹介して欲しいと松ヶ浦の元へやってきたことがあったが、そのときも断られた。一〇年以上前の話だ。その後もたびたび同様のオファーがあったが、毎回断られていた。

 だから、八尾が文潮社の記者の取材を断ったというのは本当だろう。電話口で取り繕ったりしたセリフではないと松ヶ浦は判断した。


 三番目には南栗橋組の社長である笹津紀正に電話した。今年三一歳になる男で、父親が心臓発作で急死したため、跡を継いだ三代目の若社長だった。安政義塾大学経済学部を卒業しているが、遊び人で県の入札のときにしか仕事しないと言われていた。木更津のマリーナにヨットを保有しており、ヒマを見つけては若い女性をはべらせて海で遊んでいた。


(続く)

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