第2話 唖羅憂怒ボイス
舌禍メカの爆発は偉大な科学者ノーベルが生み出したダイナマイトよろしくその存在を吹き飛ばす。まさに画期的な発明品だろう。ただしこいつはもう二度とは作れない気がする。たまたまできたこいつ自身も生まれたことを奇跡だとかのたまっていたし。
ちなみに爆発が生む物とはなんだ?
破壊か?被害か?それとも痛みか?
全てYes。ただ私が望んでいる答えとしてはNoだ。爆発が生む物、それは騒音だ。
一瞬の煌めきの瞬間に燦然と輝く隙間から溢れ出る炸裂音は聞くものの耳を強制的に傾けさせてなおかつ吹き飛ばす。それが爆弾なんだが、私は人の話を聞いていると、この女体化とか地雷なんだよねだとかやばいあの人の地雷踏みぬいちゃったなどの人との会話の際に使用する爆発的な要素が多く出てきた。
爆弾発言とかもその一例にあたるだろう。
しかし、その中でも一つ気になることがある。なぜ人のことを直接爆弾と表現することが少ないのだろうか。
「それは単純に失礼だからデハ?」
私が今から高尚な考えから導き出した答えを話すんだから静かにしておきなさい。
人のことを爆弾と表現しない理由。それは ひとえに人の力では爆弾になりきれないのではと思う。人が生み出した言霊や知識では人々の脳髄を駆け回り、連鎖していき、思想として爆発する。だからこそ先程挙げた例は成立している。そこで私が言いたいこと。
それは直接的な比喩表現として扱う場合に対する物言いだ。
先日の大雨で諸々が故障してしまったため、仕方なく駅に向かいホームで待っていた時。
私が先程降りてきた階段はいつのまにか焼け焦げていた。そうしていつしか私の身もチリチリとひりついてくる。なんなんだ。これは。そうして耳の中に異物が紛れ込んでくる。<ギャハハハハ>と。都会の喧騒を全てかき消すようなキンキンするその笑い声はむしろ我々が喧騒を作り出しているのだと主張するかの如く電車の軋む音と肩を並べる程大きく不愉快な声。人々の視線が集まってゆく。それでも彼らは止まることを知らない。ブレーキが折れている。暴走していく。聞きたくもない彼らの私生活が私の中で反響する。彼らの友達がいかに酷いやつで推しがどれほど素晴らしいものなのかを語りあいながらもメイク道具片手にそのマシンガンは絶え間なく人々の耳を撃ち抜いていく。私もその一人。
マシンガンを引き合いに出してしまったら爆弾ではないか。ならば…破片にしよう。彼らの語らいは駅の中に散らばっていく。その欠片が飛んでいく。彼らが綺麗にしてくれるわけでもないのにただ無意識に投げてくる。
と、まぁじじくさいことをあまり言いたくはないのだが極端な話。若者が周りを考慮せずに話を続けていることはもはや言葉のナイフどころじゃ済まない。全方向に飛び散り、無関係に人々を突き刺していく破片手榴弾だ。
「念頭にじじくさいとからつけるやつは間違いなく歳がいってる証拠デスヨ。」
今大事なところなんだ。話を濁さないでくれ。それで、ええと。そうだ。人に爆発表現を使う場合の話。
あいつは爆弾だから近寄らないでおこうとかいう人物はなかなかいないだろう。むしろ言うやつの方もなかなかにクレイジーだ。
私は人に爆弾表現を使う時は間違いなくその人の声がアホほど大きかった時。それが人々にはるかな害を出している時。その場に限って使える物だと思っている。声が大きいことはデメリットではない。普段はよく声が通ってメリットとして活躍してくれるだろう。ダイナマイトと一緒だ。薬にも毒にもなるのだからその力の使い方は考えては欲しい物だ。
「とはいえ博士はその時不愉快と思ったんでショウ…?」
作った私が言うのもあれだが普段酷評しているもののこいつは賢い。いずれ知識を学びきった時、取捨選択の神となるような存在になれるポテンシャルがある…気がする。
それじゃあ今日もよろしく頼むよ。
「はい。かしこまりマシタ。
口は災いのモト。目は口ほどに物をイウ。
災いを転じて福となせぬのナラバ。
いっそ消えてしまいマショウ。
幸災喪苦言」
また一つ。世界から存在が消えていく。
私が思うに全ての結末を鮮やかに終わらせる存在というのは消滅そのものであると思う。
今回だって迷惑なやつがいたもんだ、と記憶から薄れていく本来なら他愛無い現象だ。
でも私はそれを完璧に遂行できる手段を持ち合わせていた。ただそれだけなんだが。
今日もいい日だ。
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