君のせい
@BrightWin
第1話 マイク
『あいつ、マジで何なんだよ!』
思ったよりも大きな独り言を言った自分にびっくりする。
休憩室の扉がしっかり閉まっていることを確認してから、大きな溜め息をひとつ。
もうひとつつきながら、パイプ椅子に腰掛ける。
『俺の方がかっこいいよな?』
先ほどとは違い、自分にしか聞こえないような独り言をぼそりと言ってみる。
休憩はいつもスマホをチェックする時間だが、テーブルの上のスマホを手に取るも、目はスマホではなく卓上の鏡を見つめている。
卓上鏡を持ち上げて、マイクは顔をじっくりと見つめる。
艶のある肌、うるんだ瞳、ハーフのせいか堀の深い整った顔が自慢だ。
マイクは昔から他人に興味がなかった。何故なら、自分大好きナルシスト人間だからだ!
自分の為なら努力を怠らない。シェフとしての腕も磨き上げて来たつもりだ。若き天才シェフとして、雑誌やテレビにも紹介され、道を歩けば写真やサインをねだられる。
それなのに…。
『マイク先輩。コーヒーお持ちしました!』
新人の流星が俺の好みにアレンジされたアイスコーヒーを持って休憩室に入ってきた。
最近店に入った新人の流星は、同い年だが留学していたせいで一年後輩になるようだ。
『先輩?』
流星はアイスコーヒーを目の前でゆらゆらと揺らしている。
『ありがとう。』
流星からアイスコーヒーを受け取り一気に飲み干す。
思い出したかのようにスマホに目を向けながら、流星も今から休憩なのかと、声を掛けてみる。
『いえ、マイク先輩にアイスコーヒーを持って来たかっただけですから、もう戻りますね。ごゆっくりしてください。』
と、空になったグラスを手に休憩室から出ていく。
流星が店に入ってからは、売り上げが上がった。
元々悪くは無かったが、流星が笑顔で本日のデザートや、ドリンクの追加を勧めて来るのだ。
客は腹一杯でも断れない。
イケメンシェフのマイク目当ての客が多かったが、今はどうだか。
男も女も関係なく、流星が出勤かどうかの確認してから店に予約してきやがる。
『俺の店なのに。』
売り上げが上がったのに何となく心から喜べない自分が居る。
マイクはカバンの中に手を突っ込みペットボトルを探し当て、ごくごくと飲み干す。
とにかく流星の事を考えると喉が乾いてしょうがない。
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