殺意Y

殺意Y

「殺人事件についてどう思いますか」

「騒ぐほどのことではないと思います」

「狂気が充満した街に希望があると思いますか」

「狂気と希望が両立しないと思っているところに問題があるのではありませんか」

「殺し屋という職業は必要であると思いますか」

「殺し、という行為が物理的に可能であれば職業として成り立つと考えられます」

「この街に爆弾を仕掛けるのであれば、どこが良いと思いますか」

「すべてに仕掛けるのは如何ですか」

「自殺者を増やす簡単な方法を教えてください」

「税金を高くし、権力者を優遇し、貧困を加速させる。そんなことをしなくても人類の進歩と共に自殺者は増えます」

「腐敗した政治家が多い理由を教えてください」

「腐敗していない人間がいるのですか」

「詐欺を成功させるための秘訣を教えてください」

「まず、親切をしてください。良いタイミングで窃盗をして行方をくらませてください」

「犯罪のしやすい街にするにはどのようにすればいいですか」

「地球というのは、わりと犯罪のしやすい惑星です」

「連続殺人を成功させるためにはどうすればいいですか」

「他殺ではなく、自殺をさせるという考え方で進めてください」

「罪とは何ですか」

「自覚です」

「罰とは何ですか」

「自覚するための機会です」

「悪意とは何ですか」

「質問者である、あなたの中に溢れているものです」

「悪趣味とは何ですか」

「少なくともフットサルや茶道のような趣味ではありません」

「テロとは何ですか」

「分かりません」

「悪とは何ですか」

「唾を吐きかけることです」

「正義とは何ですか」

「口を開くことです」

「完全犯罪を行うために必要なものは何ですか」

「高望みはおすすめしません」

「小説や漫画、アニメが犯罪の凶悪化に影響を与えていると思いますか」

「与えているという側面は否定できません。ちなみに、影響を与えているという側面が否定できないものは、この世のすべてです」

「過去と現在であれば、どちらの方が凶悪な犯罪が多いと思いますか」

「無意味な質問であると思います」

「何故、人は罪を犯すのですか」

「罪の前であれば、人は望むものになれるからです」

「何故、人は罰を与えようとするのですか」

「罰の前であれば、人に望むものを与えられるからです」

「犯罪者はどんな思考をしているのですか」

「後悔に満ちています」

「犯罪者予備軍はどんな思考をしているのですか」

「後悔に満ちた人生を想像しています」

「無敵の人とは、何ですか」

「幻です。人は無敵になれるほど強くありません」

「一人目を殺した理由を教えてください」

「金が欲しかった」

「二人目を殺した理由を教えてください」

「羨ましかった」

「三人目を殺した理由を教えてください」

「苛立っていた」

「四人目を殺した理由を教えてください」

「体が動いてしまった」

「五人目を殺した理由を教えてください」

「気が付いたら殺してしまった」

「六人目を殺した理由を教えてください」

「殺していない」

「七人目を殺した理由を教えてください」

「本当に殺していない」

「八人目を殺した理由を教えてください」

「誰かに罪をなすりつけられた。六人目以降は殺していない」

「九人目を殺した理由を教えてください」

「誰かの陰謀に違いない」

「十人目を殺した理由を教えてください」

「私が弟を殺すわけがない」

「最後に一言ありますか」

「無敵の人に憧れています」