第9話

私は、いつの間に眠ってしまったのだろう?

目が覚めるとそこはベッドの上だった。

私は体を起こし、周りを見渡す。

どうやらここはリビングのようだ。

部屋の中は綺麗に片付いており、生活感がない。

猫(ここ……どこ?)

私はボーッとする頭を働かせ、記憶を呼び起こす。

確か、お母さんに連れて来られたような気がする。

それから、首輪をつけられ……。

猫(……ああ、そっか)

思い出した。

私はお母さんの言う通りに、されるがままにされていた。

猫(……でも、なんで?)

お母さんの話では、私はお母さんと暮らすことになっていたはずだ。

なのに、なぜかここに居る。

私は混乱しながらも立ち上がり、部屋から出る。

すると、廊下の奥の方に見覚えのある人影を見つけた。

猫「……ルカ?」

犬「これはお嬢様。おはようございます」

ルカと呼ばれた男は、丁寧に挨拶をする。

猫「お母さんは?」

私は、目の前の男を無視して、質問をした。

猫「ねぇ、どこにいるの?」

犬「奥様に会われたのですね。残念ながら、今は席を外されております」

猫「……そう」

私はガッカリしながら俯く。

でも、すぐに気持ちを切り換えて、男の方に視線を向けた。

猫「……あなた誰?」

犬「私はお嬢様の専属執事であるルカと申します。以後、お見知りおきくださいませ」

猫「……専属執事?」

聞いたことのない単語だ。

猫「……どういう意味?」

犬「それは……」

私が聞くと、男は一瞬口籠った後、静かに答えた。

犬「お嬢様の世話をし、身の回りのお手伝いをする者のことです」

猫「そうなんだ」

猫「それで、あなたは何ができるの?」

私は質問を続ける。

犬「私は料理が得意なので、毎日美味しいご飯を作って差し上げることができます」

猫「ふーん」

私はあまり興味がなかったので、適当に相槌を打つ。

猫「……じゃあ、あなたにお願いがあるんだけどいい?」

犬「はい。私にできることであれば、何なりとお申し付け下さい」

猫「うん。……なら、私の友達になってよ!」

私は元気よく言った。

猫「えへへ」

私は嬉しくなって思わず笑みを浮かべてしまう。

しかし、そんな私とは対照的に、執事の顔は引きつっていた。

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