第6話

それからしばらく歩くと、大きな部屋にたどり着いた。

猫「……ここは?」

男「ここで少しだけ待っていて下さい」

猫「……わかりました」

男が部屋を出て行くのを確認してから、部屋の中をぐるりと見渡す。

猫(ずいぶん広いな)

壁際には大きな本棚があり、その中にはたくさんの本が並んでいる。

猫(あれ?)

私は本の背表紙を見て、一つの違和感を覚える。

その本のタイトルは『魔導書』だった。

猫(……なんでここに『魔道書』があるの?)

私は慌てて周りを見渡し、他の本のタイトルを見る。

するとそこには、『聖典』や『経典』といった宗教に関する書物ばかりだった。

猫(……どういうことだろう?)

私が首を傾げていると、奥の方から足音が聞こえてきた。

そして、現れた人物は……。

猫「……お母さん?」

姫川アンナだった。



-side アンナ-

私は久しぶりに娘の顔を見た。

昔に比べてだいぶ大人びたように感じる。

髪の色も変わったみたいだし、雰囲気も変わっている。

でも、娘であることに変わりはない。

だから、私はこう言った。

母「久しぶりね。元気にしてたかしら?」

猫「……」

返事はない。

でも、そんなことはどうだっていいわ。

ただ私の言うことを素直に聞く人形になってくれれば、それでいいのよ。

私は笑顔を浮かべたまま娘の方へと近づき、そのまま抱きしめる。

母「会いたかったわ。ずっとあなたに会いたいと思っていたの」

猫「……」

猫は相変わらず黙ったままだけれど、抵抗する様子はない。……むしろ、大人しくしている方が都合がいいわね。

猫「……痛っ!」

私は猫の首元に手を伸ばし、首輪に触れる。

そして、ゆっくりと手に力を入れていく。

猫「……うぐぅ」

苦しそうにしている猫の表情を見ながら、私はさらに手に力を込めていく。

猫「……ぁ」

猫は口から泡を吹き出し、白目を剥いて気絶してしまった。

私は猫から手を離し、その場に崩れ落ちる猫を抱きかかえる。

猫「……」

意識を失っている猫に向かって、私は静かに語りかける。

母「これでやっと、あなたと一緒に暮らせるのね」

猫「……ぅ」

猫は小さく声を上げ、薄らと目を開く。

猫「……ここは?」

母「私の家よ」

猫「……どうして?」

まだ頭が働いていないのか、ぼんやりとした口調で質問してくる。

母「あなたのためなの」

猫「……?」

私はキョトンとしている猫に向かって、優しく微笑みかけた。

母「これからはずーっと一緒よ」

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