VSカリガミ~缶詰工場にそびえる悪意~
「さてと。近くにあったのはこの缶詰工場だね」
「じゃぁぶっ壊すとしますか!あっ門番クン、キミもう死んでいいよ」
二人は施設を出た後、缶詰工場に来ていた。他には
『バー・ラブオイル』
『秘密住所9885』
『動物園』
『不明』
『一番高いマンションの最上階』
となっており、どれもこれも遠い場所にあった。
「とりあえず不明は一番最後かな。まぁここ破壊しないとダメなんだけど」
「だな!しっかし、どう調べても……普通の缶詰工場には見えねぇな」
「だね。……ん、隠れろ」
正面から乗り込もうと、門番をナノマシンにしたところで、勢いよくトラックが入ってくる。二人はそれに見つからないように隠れ、どう入るかを考える為に一度確認する。
「いい肉は手に入ったか?」
「もちろんですよ!では、自分はこれで……」
どうやら業者らしい。それにしてはやたらと大きいトラックなのが気になるが。と言う訳で早速作戦に移すことにした二人。トラックの運転手が意気揚々と運転していると、目の前に女の子が現れた。
「おい邪魔だぞ!轢き殺されてぇのか!?」
「うぅ……」
「はぁ、ったく。邪魔するならこのまま轢くって」
「おい動くなよ」
クラクションを鳴らすが退かない少女に、窓を開け抗議しようとするドライバー。だが顔を出した瞬間、耳をそぎ落とされ頭を掴まれる。
「な、なんだぁ!?」
「次は顔の半分切る」
少女はカイナの変装で、とにかく外に出たらクロウが何とかして脅すと決めていた。そしてドライバーを一旦外に出すと、どうやって入るか二人は話し合う。
「で、こいつをどう使う?」
「俺にいい考えがある!ちょっと耳かせ」
「……成程。それなら確実だ」
そして再度工場前。今度は一人の少年が工場に入ろうとしていた。しかし監視員に見つかり、外に連れ出されようとしていた。
「父ちゃんを返せよ!」
「仕事中だ!帰れ」
「もう一年も帰ってきてないんだぞ!」
「ハァ…。帰れ」
どうやら、帰ってこない父を迎えに来たようである。だが当然、入れてくれる訳も無く。そのまま外に放り出されそうになってしまう。
「放せよー!」
「ふん、ガキのお守をしてる暇なんかないんでなぁ……。って、あいつか。ったくこんな時に……」
だが、外に放り出される前に、先程のドライバーがチャイムを鳴らして入れるように言ってくる。仕方がないのでとりあえずドアを開けに行く事に。
「おい、何のよ」
「死んで?」
ドアを開けた瞬間、ドライバーの下半身からクロウとカイナが出てくる。そして監視員の喉を切り裂くと、そのまま二人まとめてナノマシン化させていく。
「よし『ドライバーのフリして潜入作戦』成功だな!」
「……ねぇ、警備員吹っ飛んでこない?」
「ま、そん時はそん時だ。要があるのはここにいる工場長……『カリガミ』だけだ」
ドライバーの下半身をナノマシン化させ、無理やり歩かせて侵入した二人。二人が今回狙う相手は、この工場を仕切っている『カリガミ』と言う男。
話によれば、クソデブの化け物であるらしい。なんとも抽象的な例え方であるが、とりあえず奥へと進んでいく事にした。道中、工場長の部屋によってはみたが、そこには別人の写真が置かれているだけ。
「誰これ?」
「前の工場長じゃね?とりあえずここにはいないみたいだが……。この工場、なんか臭いな」
「不良品?」
「いやそういう事じゃなくてね?物理的にもキナ臭いって意味でもあるのよ」
クロウはともかく、カイナはこの工場についてある仮説を立てていた。それは使っている肉に関する事である。普通の肉であれば、問題は無かったのだろうが。
「これさ」
「何」
「人肉じゃね?」
歩きながら、カイナは仮説の根拠を立てていく。簡単に言えば、凄い不味いから人肉との事。
「不味いから人肉じゃ、腐った肉も人肉になっちゃう」
「いやだからなぁ……。ってかここはどこだ?」
「加工場……。だって。書いてある」
「おっホントだ。さて何を加工してんのかなぁ……。うわぁ……」
二人が加工場魔できたところで、加工場の曇りガラスが、一斉に晴れていく。そこに映ったのは、全裸になった老若男女がミンチマシーンから逃げようと走っている光景。
「うわぁ……」
「そういえば聞いたことあるよ。ストレスを与えると美味しくなる生き物がいるって」
「そうか……。まぁ人間じゃねぇのは確かだな」
何を言っているかは聞こえないが、表情は嫌と言う程ハッキリ見える。悲鳴を上げているのか、恐怖に顔が歪みミンチマシーンの中に落とされる男。走っている最中に足が折れ、絶望の表情を浮かべながら流されていく女。走れないから流されていくおばあちゃんと、それについていく子供。
「最低レベルだなこりゃ」
「あのトラックってコレを運んでたんだね」
「あぁそういう……。どっちにしろ最悪だぞ」
さて工場長はどこだと歩を進めようとすると、なんと目の前にこのクソ悪趣味な光景をかぶりつきで見ている男を発見。ハゲでデブで醜い顔が特徴。
「アレじゃね?」
「アレだ」
発見した直後、二人はガラスを破壊し、一直線にカリガミの元へ吹っ飛んで行く。そのままカリガミの顔を蹴りながら、第二缶詰製造所へ入る。
「んぉお?!おぎゃぐさんだねぇ?!」
「客じゃねぇよ」
「あっそー……。『『工場長の規定ルールその8』!不法侵入は即殺せ!』だっでよぉ!ごろじでおいじいがんづめにじであげるがらねぇ!」
「悪いが死ぬ気なんかこれっぽちも無いんだこっちは。お前が死ねよ」
そう言うとカリガミは口の中から、火炎放射器を取り出しクロウとカイナに向けて放射する。それを避け、ナノマシンを付けたナイフを投擲する。
「よし命中!」
「おぉ?!ごれ!じっでる!おでどおなじばげものもっでる!ぎがない!」
「……。ダメそう」
「成程なぁ!んじゃ切り殺してやる!」
「じゃナイフ取り返してよ。アレが無いと切れない」
そして二人が戦闘しているさなか、先程不法侵入した少年は処理場近くまでやってきていた。少年はこの光景に、吐き気を覚えるが、何とか飲み干して父親を探す。
「ひ、ひどい……。それより父ちゃんはどこ!?」
そしてついに、少年は父を発見する。
「父ちゃん!」
「……え?」
先程から、走っている奴らがいるベルトコンベアの上で。
一年間、彼はこのクソゲーから逃げ、生き残り続けてきたが、ここで息子を見たことで気が動転してしまった。そのまま目の前で転んだちびっ子と共に、ミンチマシーンの近くまで行ってしまう。
「父ちゃん!?」
「……」
もはやこれまで。父が最後に選んだのは、息子への懺悔であった。
「すまない」
子供をベルトコンベアの上に逃がし、自らはミンチマシーンの中へ落ちていく。一応残り一人になると停止する用に作られている機械は、その子供を残して停止する。
「……父ちゃん?」
実の父が、見知らぬ子供を助けて死んでいったことに、絶望する少年。カリガミはそれを見てとことんあざ笑っていた。
「ばがじゃねぇのぉ!!!!ばがだおでよりばが!」
「あ?」
だが、その嘲笑いが仇となった。大きく開けた口の中に、ミンチにされた人肉から作られたナノマシンを、大量に注ぎ込んでいく。どんどん膨らんでいくカリガミは、抵抗することも出来ずに巨大な肉塊に成り下がる。
「ぶげげ……」
「お前がミンチになれよ」
そして、カイナはブクブク膨れ上がったカリガミを、思い切り蹴りミンチマシーンの中に入れる。しばらくカリガミの悲鳴と、ミンチマシーンの壊れる音が工場内に響き渡り、半分程ミンチにしたところで機械が壊れる。
「……クズめ」
カイナは、カリガミに対し吐き捨てるように呟く。一方のクロウはと言うと、その感情を理解できないと言うように首をかしげるのであった。
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