第5話「強敵」
ダンジョン内は昨日と同じく明るかった。
勇者様たちはまだこのダンジョン内にいるようだ。
勇者様たちは村に帰らないでずっとダンジョンに潜っているのかな?
それとも一度村に戻って、またダンジョンにも潜ったのかな?
それによって一階をくまなく探索するか、昨日探索したところをスルーして下の階に降りるか分かれる。
勇者様に同行できればいいんだけど。嫌われてるんじゃ難しいかな。
勇者様のうんこの取り残しがあると困るから、昨日一度探したところももう一度探索しておこう。
ダンジョンに入ってしばらくして、スライムと遭遇した。しかも同時に二匹!
「お祖父様からもらった弓攻撃!」
気がつけば昨日一匹でも苦労したスライムを二匹まとめて倒していた。
スライムなどスキルアップの実を食べ、力、素早さ、命中率の上がった僕の敵ではない。
その時レベルアップのファンファーレが鳴った。
使える魔法はまだないけど、僕の頑張りが評価されたみたいで嬉しい。
「この調子でさくさくスライムを狩るぞ!
……目的は勇者様のうんこ集めだった」
スライムを倒すのはついでだ。
地上一階で勇者様のうんこを二つ回収した。
うんこは昨日探索した所に落ちていたので、勇者様も一度村に帰ったみたいだ。
「地上一階に勇者様のうんこはもうないな。
ついに地下に進むのかドキドキするな」
勇者様のうんこを回収しているとき、地下へ続く階段を見つけてある。
「ダンジョンは下の階ほど強いモンスターが出る。
油断しないで進もう」
僕は慎重に階段を降りた。
地下一階に到着してすぐ、何かすばしっこいものが僕の横を通り抜けていった。
「ひゃぁっ!」
何が出たのかとドキドキしながら周囲に目を配ると、そこにいたのはスライムで僕は拍子抜けした。
「地下に降りても、すぐに強い敵が出ることはないみたいだ」
きっと少しずつ敵のレベルが上がっていくのだろう。
僕はスライムを弓で倒し、地下一階を探索し始めた。
地下一階にいるモンスターはスライムだけだった。しかし一度に襲ってくる数が違う。
地上一階では同時に出てくるのは一匹か二匹だったが、地下一階ではスライムが四、五匹同時に襲ってくる。
相手がスライムとはいえ油断すると命取りになる。
二時間ほど地下一階を探索した。
勇者様のうんこを三つ見つけ、僕のレベルは3まで上がっていた。
「この階の勇者様のうんこは全て回収した。
地上一階で見つけたのは昨日と今日を合わせて七つ、地下一階で見つけたのは三つか」
数にばらつきがあるな。勇者様は地下一階はあまり探索しないで次の階に向かったのかな?
「さてとこれからどうしようかな?
まだお昼ぐらいだから地下二階に進むか、それとも一度引き返すか……」
地下二階に続く階段を眺め、僕は独り言を呟いた。
今のレベルで地下二階のモンスターと渡り合える自信がない。
「一度村へ帰り世界樹からアイテムを貰って、それからまたダンジョンに潜ろう」
世界樹の肥料係はもう僕しかいない。
傷ついた時助けてくれる仲間もいない。
多少時間がかかっても無謀な探索は避けよう。
僕が引き返そうとしたその時、地階二階に続く階段から何かが上がってくる音が聞こえた。
僕は咄嗟に弓を構えた。
勇者様が取り逃がしたモンスターが地上を目指してやって来たんだろうか?
耳を澄ませると足を引きずる音と荒い息遣いが聞こえた。
階段を上ってくる敵は怪我をしているのか?
手負いのモンスターなら僕一人でも勝てるかもしれない。
敵が姿を現した瞬間を射とう。
僕が弦から指を放そうとしたその時……!
「待って! 射たないで!」
地下二階から上がってきた何者かが声を発した。
「アリッサ……様?」
階段を登ってきたのはアリッサ様だった。
アリッサムの右足には布が巻かれていて、布には血が滲んでいた。
「何があったんですか?」
「実は……」
アリッサ様の話では、勇者様一行は地下四階を探索していたらしい。
勇者様は「足を怪我してMPが切れた回復役など不要だ」と言って、
MPが残り1になり、足を怪我したアリッサ様を一人残し、
地下五階に降りて行ったそうだ。
「それは酷いですね。
勇者様なら回復薬を持っているでしょうに。
もしかしてアリッサ様が置き去りにされたのは、昨日僕をかばったから……?」
それでこんな意地悪をされている?
「コニーさんのせいではありませんよ」
アリッサ様はそう言ってくれたけど、絶対僕のせいだよ。
「アリッサ様、よかったらこれ使ってください」
僕はアリッサ様にポーションを渡した。
「でも、コニーさんの大事な物では?」
「いいんです使ってください」
村に帰れば世界樹からもらえると思うし。
「ではありがたく……コニーさん、後ろ!」
「えっ?!」
振り返ると普通のスライム二十匹分はある巨大なスライムがいた。
しかも普通のスライムと違って禍々しいオーラを放っている。
「なんで、地下一階にこんなモンスターが?!」
もしかして勇者様のうんこを吸収して大きくなった?
この階に勇者様のうんこが少なかったのは、すでにスライムに吸収されていたからだったのか!
「アリッサ様、ポーションで回復してください!
そして村まで行って助けを呼んできてください!」
僕がぐずぐずしていたからこんな化け物を生み出してしまったんだ!
せめてアリッサ様だけでも逃さないと!
「でも……それではコニーさんが!」
「僕は大丈夫です!」
スライムに向けて弓矢を放つ。
しかしスライムのぷよぷよした肉体に阻まれて、ダメージを与えられない。
そのときスライムの中に赤く光るものが見えた。
きっとあれがスライムの核だ!
弓矢は届かないけど木のナイフなら……。
腰に差したナイフに注意を向けたとき、スライムの強烈な体当たりをくらい岩に叩きつけられた。
「うぅっ……!」
なんとか起き上がったけど、右腕に激痛が走る。折れてるかもしれない。
利き腕がこれじゃあ、もうスライムにとどめをさせない。
スライムが体をうねうねさせながら迫ってくる。
「
その時どこからか緑の蔦が伸びてきて、スライムの身体を拘束した。
蔦の伸びてきた方向を見るとアリッサ様がいた。
アリッサ様、逃げたんじゃなかったの?
「コニーさんこれを!」
アリッサ様が僕にポーションをかけてくれた。
僕の右腕の怪我が治っていく。
「長くは拘束してできません!
早くとどめを!」
「感謝します!
アリッサ様!」
僕は背のナイフを取り出しスライムの核に突き刺した。
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