閉架書庫はそっと囁く

文月柊叶

1. 醒

『〜♪』

 ――まもなく・閉館いたします・本日のご利用・ありがとうございました――――

「……ッ!」

 耳にアナウンスが届いたその瞬間、私は目を覚まし、伏していた机から体を起こした。鼓動はどんどんテンポアップし、汗が全身の毛穴から吹き出しているかのような気になってくる。

 ……いつになっても、こう。

 図書館の閉館アナウンス。古びたスピーカーから流れる、『愛の挨拶』と、本日の終了を告げる言葉。もう十代も後半だというのに、情けないことに私はこの放送に怯えている。

 幼い頃から怖くてたまらないのだ。もし流れ終わったら、閉じ込められてしまうんじゃないか……そんな恐怖が私にまとわりついている。

 でも。

 本当に、そう思ってしまっても仕方ないような出来事は、一応あるのだ。

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