扇の偉才は逆襲する――清龍高校編

第1話 零落

U15野球ワールドカップ

 私が丁度中学校三年生の時に開催された大会は異様に世間の関心度が高かった。

 理由は二つあった。一つは現在日本は大会三連覇中であり、四連覇がかかっていたということ。そしてもう一つは史上二人目の女子選手として私が選出されたからであったのだが、さらに厄介なことに史上初、女子選手としてキャプテンに選ばれてしまったのである。


――いや、正直言って私も初めは相当に張り切っていたんだ。そりゃなんてったって日本代表なのだもの。しかもキャプテン、絶対に四連覇してやるってね。


 その年の日本代表は即席のチームながら、異常なほど完成されたチームであったため四連覇への期待はますます大きなものになっていた。さらにその話題性にマスコミが黙っているはずもなく、連日新聞やテレビなどでも大々的に報道され、少々のブームにまでなっていた。

 そしてその期待に応えるかの如く、日本代表はほとんどの試合を圧勝で決勝戦進出を難なくと決めたのだったが、順調なのはそこまで。対アメリカ戦は非常に苦しい試合であり、点を取られては返し、取られては返しのシーソーゲーム。試合が終盤に差し掛かった頃の記憶は少し曖昧なものであり、あれほど神経をすり減らした試合はかつてなかった。

 そんな好ゲームに終止符を打ったのは些細なミスから生まれた一つのプレーだった。

 その結果、日本代表は四連覇を逃したのだった。

 そしてその数日後、私は‥‥‥


――野球をやめることにした。

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