第2話 ロディの足ふみ
「あ、あふぅ、ロディ~~」
僕はロディ、つい先刻勇者パーティーを追放されたばかりの絶賛就職活動中の冒険者だ。
そして、この艶めかしい声を発しているのが聖女マリーナである。追放されたパーティー内で僕に良くしてくれた美少女であり、現在彼女と宿屋にいる。
「ふぅう~いい~~」
僕はベッドに寝そべるマリーナの上に乗っている。彼女の顔はいつもの凛とした聖女の顔とは似ても似つかないほど緩み切った恍惚とした顔になっている。断っておくが、決してやましいことをしているわけではない。
「さて、こんなとこかな」
僕はマリーナの背中から自分の足をおろすと。一息ついて彼女にマッサージの終了を告げる。
この世界にはスキルという1人1つ授けらる固有の能力がある。僕のスキルは「足ふみ」だった、勇者ワレイドにクズスキルと言われた能力だった。
「あ~ん、もうおわり~? もっと~」
「だめだよマリーナやりすぎは、魔力が活性化しすぎちゃうから。このぐらいでやめとかないと」
あと、セリフに気を付けてほしい、声だけだと僕が聖女に変なことしてるようにしか聞こえないから。
「む~、ロディのケチ」
美少女の聖女さまは、ぷくっと頬を膨らましてベッドから降りてきた。
「あ~でもロディのマッサージ最高! なんか体の奥底から力が溢れてくるわ!」
僕のスキル「足ふみ」のマッサージは体内における魔力の流れを活性化する効果がある。パーティーの支援という僕の役割から勇者パーティーにいた時は可能な限りマッサージをしていた。
マリーナは喜んで受けてくれる、賢者のエレナもなんだかんだ言って受けるのだが、僕に踏まれるという行為は快く思っていないようだった。勇者ワレイドは論外だ、僕に踏まれるなんて彼のプライドが許さないとか言ってたな。
◇◇◇
僕は王都の冒険者ギルドの掲示板とにらめっこしている。新しいパーティーに加入して稼ぎ口を見つけることも急務なのだが、そう簡単に就職できるわけでもないので、まずは日銭を稼がないといけない。
多少の貯金はあるが、妹への治療費が定期的に必要なので、できれば貯金には手をつけたくない。
「さすが、王都のギルド、クエスト依頼が山のようにあるな」
僕は1枚の依頼書を掲示板から取り外して、ギルドの受付嬢にわたした。
「はい、こちらの宅配クエストを受けられんですね。ではこの書類にサインお願いします!」
サインした書類を受付嬢にわたすと、彼女はすこし間を開けて僕に問いかけてきた。
「あれ、パーティー登録情報を見させて頂きましたが、ロディさんですか? たしか勇者さまのパーティーメンバーでは?」
「え~と、ちょっと色々ありまして、その今はソロです」
受付嬢は何かを察してくれたようで、それ以上は何も聞かずにクエストの受注の手続きを取ってくれた。
「おいおい、勇者パーティーはずされるって、なにしたんだよあいつ」
「勇者パーティーメンバーが宅配とかマジうけるんだけど~」
「あそこまで落ちぶれたくないねぇ」
ギルドなにから漏れ聞こえる多数の陰口が僕にささる。
う~ん、やっぱり僕の力不足が原因なんだろうな、次にパーティーに入る時までになんとかしないと。僕はギルドの建物を出るとクエストの準備を始めてた。
「でもくよくよしてもしょうがないや。さあ、今日の分は稼がないと」
僕の受けたクエスト内容は宅配だ。荷物を指定場所に届けるという簡単なもの、僕はこのクエストを10個受けた。
「さてと、スキル【足ふみ】高速足ふみふみ!」
僕の足が何本も増えてすさまじい勢いで足ふみを開始する、スキルを発動した瞬間に僕はギルドの建物にはいなかった。
歩行者にはぶつからないように、人の間を高速移動する。たぶん早すぎて誰も目視できないので、驚かれる心配もない。
「ありがとう、助かったよ」
僕は順調に宅配クエストをこなしていく、すでに9個の宅配を終えて、最後の1つである。
「え~と、最後は教会か。えと、この教会は城壁の外にあるみたいだね」
僕は高速移動で教会に向かう。思えば勇者パーティー時代も高速移動で物資調達やダンジョン索敵をよくやったものだ、高速すぎて誰にも気づかれなかった気もするけど…あと、賢者エレンが「それキモいからやめて」とか言ってたな。などと考えていると目的地の教会がみえてきた。
「よし、これで最後のクエストも完了だ、ん?」
なんか教会の様子がおかしい、大きな塊がぞろぞろ出てくるぞ。
「ロディ!」
教会から聞き覚えのある声が飛んできた、それは宿屋で別れた聖女マリーナのものだった。
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