女神に頼まれて助けに来た王女様が戦闘狂っぽい

さまようよろい

第一章 ヤマト王国編

第1話 バレット M-82A1

『ふっ、ふはっ、ふははははっ!』

魔王軍四天王と呼ばれる魔王軍の最高幹部の一人、死霊術師ネクロマンサーのベルゼビュートは己の眼下に広がる光景を前にして、満足げに高笑いをしていた。


小高い丘の頂上に立つ彼の前には万を超える不死者アンデッドの軍団が集結していた。


小鬼ゴブリン豚鬼オークに少数の大鬼 オーガの混じった屍人ゾンビ、どこかの国の騎士や冒険者だったらしくボロボロの鎧を着てやはりボロボロの剣や槍、盾を手にした骸骨兵スケルトン

狼や熊、大蛇等の魔獣の屍獣ゾンビまで居る。


これら不死者アンデッドの軍勢を率いて、村を襲い、街を陥落させ、国々を滅ぼすのだ。


不死者の軍団は今はまだ一万程度だが、一戦毎に新たな死者を加える事により、直ぐに数十倍の規模に膨れ上がるだろう。


『見よ、我が不死の軍団を!』

死霊術師ベルゼビュートは傍らに控える側近の死霊騎士デュラハンに得意気に振り向く。


〈ばしゃっ〉


『ぐぼっ?』


突然、死霊術師ベルゼビュートの胸にぽっかりと風穴が開いた。


〈ダーン〉


一拍遅れて遠くから轟音が聞こえて来る。


『えっ?』


死霊術師ベルゼビュートは己れの身体を見た、胸に大穴が開き完全に心臓を吹き飛ばされている。


己自身の身体も不死者アンデット化している為、即死はしないが心臓が無ければ脳に血液を送れなくなってしまい思考能力が喪われてしまう。


『さ、再生の魔法を・』


〈ばしゃっ〉


しかし次の瞬間、まるでスイカ割りのスイカのように死霊術師ベルゼビュートの頭部が弾けた。


〈ダーン〉


また、一拍遅れて銃声が聞こえてくる…


銃弾の弾速が音速を超えている為、遠距離からの射撃では着弾した後に遅れて銃声の方が届くのだ。


~・~・~


その数瞬前…


不死者アンデッドの軍団が集結している丘から1km程離れた小規模な林の中に、森林迷彩柄ウッドランドパターンの戦闘服を着た上になギリースーツを頭からすっぽりと被って辺りの風景に完全に溶け込んだ人物が二人。


「コロナ、丘のてっぺんで馬鹿笑いをしている魔族バカとの距離は?」

俺はバレット対物ライフルのスコープから目を離さないまま、隣で臥せている観測員コロナに聞いた。


「えーと…」

レーザー距離計付きの軍用双眼鏡を目に当てながらコロナが口元をもにょもにょさせる。


「アラビア数字の読み方は教えたよな?」


「い、いち、 いち、さん、ろく?」


どうやら1,136mらしい。


「風は?」


「右から左に微風って感じだな…」


確かに魔族バカの着たローブの裾や死霊騎士デュラハンの持つ魔王軍四天王の旗が少しだけ風に揺れている。


まあ、この距離でこの程度の風なら強力無比な12.7㎜NATO弾には殆ど影響は無い。


ドーン!


轟音と肩への強烈な反動と共にバレットから発射された弾丸は1㎞先の死霊術師ネクロマンサーの胸の真ん中に命中して心臓を吹っ飛ばした。


「当たった♪」

隣に寝ころびながら大型の双眼鏡を覗き込んでいるコロナが歓声を上げる。


「心臓を吹っ飛ばしたのに倒れないな…」

胸に大穴を開けてやったのに即死しないとは、厄介な化け物め。


ドーン!


バレットの次弾は頭部に命中して死霊術師ネクロマンサーの頭を四散させた。

首無し死体となった死霊術師の身体がそのまま力無く地面に倒れ込む。


「タナカ、死霊どもも倒れたぞ!」

喜色も露にコロナが報せてくるように、死霊術師に操られていた屍人ゾンビどもや骸骨兵士スケルトンどもがバタバタと崩れるように地面に倒れ伏していく。


「あっ、デュラハンはまだ動いてる、タナカ、こっちに突撃して来るぞ!」


死霊術師の左右に控えていた死霊騎士デュラハンが二騎、こちらに向けて騎乗突撃チャージして来る、バレットの発砲炎でこちらの位置の見当をつけたのだろう。

1000mの距離をたちまち詰めて来る。


俺は右側のデュラハンがその左腕に抱える首をスコープの十字線の中央に捉えると、まるでスイカでも撃つかの様に吹き飛ばした。

残された身体が壊れた人形のように力無く落馬する。


左側のデュラハンはその漆黒の甲冑と跨がった首無し馬もろともにコロナがタングステン合金製の聖剣“リアル斬鉄剣”で真っ二つにした。

ところでコロナお前、何で刀で魔物を斬ってんだよ、短機関銃S M Gを渡しといたろ。


「タナカ、これで全部片付いたな」

デュラハンを斬り伏せたコロナがニカっと笑う。

お前は王女なんだろ、もっとお淑やかに笑えや。


「いや、まだ戦場の後片付けが残ってる、あの丘に灯油でも撒いて死霊どもの残骸をちゃんと焼いとかないと疫病の原因になるぞ」

「えーっ」

おい、そうイヤそうな顔すんな!

お前は笑顔なら結構可愛いんだから…

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