第2話 AMT ハードボーラー
「田中一郎さんですね」
行きつけの酒場で飲んでいると突然知らない女から声をかけられた。
背中まで伸ばしたサラサラのストレートのプラチナブロンドの髪に傷一つ無い白い肌、スラリとした手足に均整のとれた身体つき、美しさと可愛らしさが同居した綺麗な顔、目は右目がブルーで左目がゴールドのオッドアイだ。
まるで女神みたいだな。
こんな場末の酒場には似合わない美女だ、まだ若く見えるから美少女と言った方が良いか…
身長は女性としては高め、いや、かなり高いピンヒールを履いてるな…履き慣れていないのか今足首がグキッってなったw
俺は用心の為、腰の後ろに着けたホルスターに収めた護身用の拳銃AMT ハードボーラーの
「そ、それってAMT ハードボーラーですよね!」
女がいきなり詰め寄って来た、ちょ、顔が近い!
それに腰の後ろ側に装備しているホルスターはそっちからは死角で見えない筈なのに何故わかる?
えっ、なんで護身用の拳銃にAMT ハードボーラーみたいなマニアックなのを選んだのかって?
いや、別にターミネーターの映画に影響された訳じゃないぞ。
もう俺は現役の兵士じゃないし、ただ単に手入れが楽なステンレス製のM1911A1が欲しかっただけなんだ…
それに俺のはシュワちゃんが映画で使ってたロングバレルモデルじゃないし、レーザー照準器も付けてないしな。
「わ、わたしも7インチモデルを持ってます、レーザーサイト付きで!」
…っ、コイツ、このなりでガンマニアか!
まあ、俺はあの映画に出てきたフランキSPAS12
「田中一郎さん、私は“ミリー”と言います、貴方にお仕事の依頼を…」
警察官の父親の影響で幼少の頃から剣道、柔道、空手の道場に通い、どれも
俺の席の向かいに座った“
「俺のようなボロボロで年寄りの傭兵に何をやらせようって言うんだ?」
いや、マジで、
「某国の王女を救出して欲しいのです」
いや、そんなん今の俺にはムリムリ。
「報酬の一部として、欠損部位の再生と最盛期の肉体に若返りさせると言っても?」
えっ、そこんとこ詳しく!
~・~・~
悪魔との契約かも知れないが、俺はその仕事にのった。
『悪魔なんかじゃありません、私は“女神”です!』
“女神”を自称するミリーの管理する世界に行って“勇者”の血をひく王女を救い出せって事らしい。
「そういうのこそ傭兵じゃなくて“勇者”の仕事じゃないのか?」
『ぶっちゃけ、“勇者”に成れる素質を持った人が見つからないのよ…』
なるほど、それで傭兵なのか…
ミリーが言うには、その王女が次代の“勇者”を産む可能性があるんだそうで、魔物から護って欲しいんだとか…
そう、魔物…自称“女神”のミリーが管理する世界は“剣と魔法”の世界で魔物やら、魔族やら、魔王なんてのもいるらしい。
『自称じゃないって言ってるでしょ!
田中さん、貴方には欠損の再生と最盛期の肉体への若返りの他に現地で役に立つ
“異世界言語理解”、 “
「言語理解はなんとなくわかるが、残りの二つは?」
『インベントリは武器や装備品、食糧なんかを保管しておける
なるほど…
『魔物を倒す事で得られる女神ポイントや現地通貨、地球の通貨でもトレードが出来ます』
女神ポイント?
「で、魔法系のスキルは?」
『田中さんなら魔法の呪文を詠唱するよりも銃で撃っちゃった方が早いでしょ』
なんだ魔法使えないのかよ、“剣と魔法”の世界って言ったじゃんか。
「じゃあ、インベントリに地球に残した俺の私物の武器やなんかを回収出来るか?それとトレード先の相手の指定も出来るようにして欲しいんだが…」
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