幽霊部活の幽霊部員

@nya-nya-

幽霊へのお誘い

 文芸部、パソコン部そんな部活の日陰具合とは比べられないくらいの日陰にある新聞部はあなたと僕だけの秘密基地のようだ。




「突然だが君に話したいことがある」


「なんだよ、彼氏でもできたのか」


「いつも言ってなかったか、僕に彼氏ができるのはおそらく来来世くらいだろうと」


「じゃあ一体何なんだ?」


「今夜僕と一緒に散歩をしないか」


 こいつは突然分けのわからないことは言い出す。


 癖の有るボクっ娘につきあわされてはや二年、新聞部と言った幽霊部員すら寄り付かない幽霊部活に入ってしまったことが原因だ。


「突然なんだよ、時間によるな」


「3時」


 15時か、もう今は16時。


彼女の言う時間はつい3600秒前に過ぎていってしまっている。


そして夜というのにはほど遠い時間だ。


「おいおい、お前ついに時計まで見れなくなったのか」


「何を失礼な深夜3時に決まっているだろうが、あとお前呼びはやめ給え僕にはれっきとした伊勢地菜々という立派な名前があるんだ」


「3時!? お前正気か」


 こいつが突然言うことにはろくなことがないと言うことをしっかり頭に刻んでおく必要がありそうだ。


「昨日、いや今日か少し外に出てみたんだけど少し怖くて」


「は? 何いってんだ」


「ごめん、嘘ついためっちゃ怖かったコンビニ近くには夜なのにサングラス掛けた変な人が居て」


 俺が聞きたいのはそこじゃないのに。


「嫌だね、まず親が許さないだろ」


「ふっふふ、僕は知っているのだよ、君の父親は単身赴任母親も出張だということも」


「おい、なんで知ってる」


「スマホのパスワードは変えておくんだな、見たのはカレンダーだけだ安心しろ」


 普通に犯罪だろ、まあこいつがカレンダーしか見てないというのなら本当にカレンダーしか見てないだろう。


 そういう部分では俺保こいつに信用をおいているのかもしれない。


「お前の親はどうなんだよ」


 俺が良くてもこいつがいいとは限らない、コンナンでも一応女子なのだ。


「前に言わなかったかい、僕は一人暮らしなんだよ」


 そういえばそうだった、確かこいつの親は去年が海外に転勤だとかで娘一人置いて海外に行ってた。


 ついていけよとその報告を聞いたときに思ったのを覚えていた。


「流石に危ないだろ」


「それは確かだ、だけどな僕は夜中寝静まった街の中を歩きたいんだ」


 いや、たしかに楽しそうだけどそんな深夜とかじゃなくても11時くらいじゃダメなのだろうか。


 ただ、こいつは一度決めたことは曲げないのとは2年近い付き合いで少なからず学んできたつもりだ。


「そこで、詩織くん一緒に散歩することは決定事項なんだが君の服を貸してほしい」


 決定されてしまった、拒否したところで夜中インターホンを連打されて叩き起こされる未来は見えている。


「なんで服を貸さなきゃならん」


「いや、僕男物持ってないし流石に女子丸出しで夜中徘徊するわけにはいけないからな」


 そういうところにだけは頭が回る。


 つくづく変なやつだ。


「最近肌寒くなっているから長袖のパーカーとかがいいな、フードがあればこの長い髪も隠せるし」


「ちなみに確認なんだけど、俺に拒否権は?」


「ない、そして散歩にも拒否権はない、なぜなら」


「なぜなら?」


「これは新聞部の活動だからさ、部長が誰か忘れたのか?この僕だ!」


 面倒だからって部長を押し付けるんじゃなかった。


 そんな後悔は虚しく、俺は夜中3時に公園に出向きこいつ、伊勢地と散歩することが決まってしまった。




 ただ俺も夜に憧れがないわけではない、若干心が踊っているのを隠しつつこのクセの強いボクっ娘と部活を切り上げ帰路についた。


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