第2話


 これはあくまでも表の歌である。

 知られていない裏の歌には、すべてがとある凡庸な男によって仕組まれた事だとされている。


 その男の名はユーリ。前世の記憶を残したまま、この数の世界に来た、異世界転生者だという。

 記憶にある前世での職業は首相。彼は当然のようにこの世界でも同じ地位を要求した。


 そこで用意されたポストは奇数の国のプライム・ミニスター。そんなわけで彼は国家の中枢を担う数機卿たちを束ねている。


 その彼が転生後、すぐに私を召し抱えた。私は八絃琴を携え駆け参じた。

 私が唄うべき歌を訊ねると、彼は言った。

「自らの偉業を歌にせよ」


 私は聞く。

「その偉業とは、どのようなものでしょうか?」


 彼は答える。

「それは、これから成されるのだ」


「具体的には、何かなさるおつもりが?」


「この世界を私の支配下に統一する」


「そうすると、どうなります?」


「戦争が終わり、平和になる」


「平和になりますかねぇ」


「これは世界平和統一運動だ!」

 

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