伝えたい
樹さんのことが好きだと気がついたのは、あの冬の日だと思う。それまではなんというか、憧れや尊敬に近い感情だったように思う。だけどこの日を境にして、私の樹さんに対する気持ちはどんどん大きく膨れ上がっていった。
✱✱✱
「おはようございます。先生」
「あぁ、樹さんおはよう」
今日も先生に先をこされた。でもこんな流れで話すのも、すごく楽しいと思えるようになった。
ふと、先生がこんなことを言い出した。
「樹さんももうすぐ卒業か〜、寂しくなるねぇ」
卒業...、当時の私にはまだ先の話であまり関係のないこと。でもこの日に聞いたこの言葉はすごく悲しい言葉に聞こえた。
「そうですね。春から寮生活なのでちょっとだけ寂しいです」
寮生活ということは、地元を離れるということになる。地元を離れるということは、他の人より会える機会が減ってしまうということになる。
それに加えて、私も次の春から転校することが夏休み明けにはほぼ確定していた。
「.....」
私が何も言えずにいると、先生が微笑んで『彩花さんもこの春から転校して寮生活することになったんだよね』と言った。
また先を越されたと思った。けれどそれを聞いた樹さんはいつもより優しい顔をしていて......。
「そっか、まだ小さいのに凄いね。場所は違うけどお互い頑張ろうね。応援してるから」
あぁ、すきだなぁと思った。憧れや尊敬の気持ちももちろんあるけれど、それ以上に胸の奥の方がぎゅっとなるようなそんな感覚がした。
私はここを離れるのが、樹さんがもうすぐ卒業してしまうのがとても悲しいと思った。卒業してしまったら、こうして優しく声をかけられることも、笑顔を向けてくれることも....頭を撫でてくれることだってなくなってしまうのだから。
私は頷いた。この時初めて年の差があることが辛いと思った。この気持ちは絶対に伝えないと、後悔すると思った。
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