創作してて思うこと

ケタ陀羅

〇〇に似てますね

作者に言ってはいけない感想の一つとして

「〇〇に似てますね」

というのがよく挙げられる。

自分は状況によるんじゃないかなと思うので、その理由を書いていこうと思う。ただ、本当にどんな理由があってもこの言葉が駄目で言われたくない人もいる。そこにわざわざ言いに行くのは悪意でしかないからやめてくれと思う。


***

まず、この言葉はどういう人が使うのか考えてみたのだが、都合よくサンプルが近くにいた。

私の母親だ。悪意無く、結構カジュアルに「〇〇に似てる」と言うのでその様子を観察していた。

母はSNS上に薄っすら流れている「この言葉は避けた方が無難」という空気感を知らない。普段ネットに触れないタイプの人間だ。こういう現実世界に主軸を置いている、かつ創作をしないタイプの人間にとっては、モンスターと旅をすればポケモン、ロボットに乗ればガンダム、バトル漫画ならドラゴンボール。というように、有名作品もしくは自分の世代の作品か家族が好きな作品しか知らない。それが「〇〇に似てる」の〇〇に入るのが有名作品が多い理由だろう。

母にとって有名作品は「自分でも知っている=人気がある」という解釈で心からの褒め言葉なのだ。特別意訳すると「〇〇レベルで全世界規模の人気が出そうな素敵な作品ですね!」となるのだから分かりづらい。

一時期は何を見ても「鬼滅に似てる」と言っていた。鬼も刀も出てこないのにそう言うものだから、え!?どこが!?とめちゃくちゃ驚いた。

多くはジャンプ作品に対して言っていたので納得の行く部分もあった。作風をなんとなく感じとって出版社の匂いまで嗅ぎ取っているけど、言葉にするのが難しいのか、一言で済ませようとして「〇〇に似てる」と言っている印象だ。

加えて、母は作画という言葉すら知らなかったが、なんかすごい綺麗だし面白いと言って心から鬼滅にハマっていた。気づいたら円盤を買っていたし舞台挨拶まで見に行っていた。だから、特別意訳すると「爆発的な人気が出そうな作品」とか「作画が神」もしくは「こんなに好きになる事はそうそうない」みたいな意味を含んでいたと思う。とにかく言葉足らずだ。


以上を踏まえて考えると、この言葉を使う人は長い感想を書くことを恐れているのではないか。

私自身、感想を書くときは長くなりがちで、初めてファンレターを書いたとき、便箋がどんどんなくなるのでとても怖かった。こんな長い文章を読ませて推しの時間を奪うだなんて重罪では?と思った。雑に流し読みして捨ててくれと思いながら出した。

「〇〇に似てる」を使う人はこの一つの言葉に色んな意味を詰めているのではないかと思う。推しの時間を奪いたくなくて簡潔にまとめようとした結果だとしても、讃美する言葉が出てこなくて自分が知ってる単語を使ったにしても。肝心の推しに伝わっていないとすれば、それはとても悲しい行き違いだなと思う。


少し脱線するが、母に「〇〇みたいな絵描かないの?」と言われたことがある。〇〇に入る作品は母にとって、知名度があって誰からも愛される作品であり、私にもそういうものを描く才能があると本気で思っている。だから、そこにも悪意はないのだ。悪意がないからと言って傷つかないわけではないが、母が言葉足らずなことを私は知っている。

何が言いたいかというと、苦手な言葉をもし不意打ちでくらったとしても、それを完全に褒め言葉として使っている人がいると知っていれば多少の防御にはなるんじゃないかな、ということだ。

この文章が誰かの傷を防げればいいと願っている。


***

ちなみに私は「あ」とかじゃなければどんな感想も大歓迎だし、なんなら「あ」という感想をもらったら自分はどう思うのだろうという知的好奇心すらあるので、何も気にせずに感想を送ってほしい。

感想が大好き!!!!!!!

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