リリー・ブロッサム
量子エンザ
第1章 恋模様は桜色
第1話 春の訪れ
進級して初めての登校日。
あたしが通う高校通称お嬢様学校と言われる、水明女学園は勉学、部活共に力が入っており特に吹奏楽や華道といった部活がコンクールなどで毎年入賞している強豪校だ。
部活は強制ではないため、入らなくても構わない。
お嬢様学校たるゆえん、習い事がある生徒に配慮しての校則のため、部活に所属していない生徒も多い見たい。
あたし?あたしは部活には興味が無かったので入らなかった。習い事でピアノがあるからってのもある。
登校は基本歩き。車でお迎えしてる生徒が多いけれど、あたしは登校中に見られる景色が好き。
家の人には、危ないからとか言われてるけど、無機質な車で息苦しい狭い空間にいるのが苦手だから何度も断った。
ブワッと春風がなびく。左手にある桜が一気に舞う。雲ひとつない何も遮るものが無い太陽の光に、反射してキラキラとそしてゆらゆら花びらが地面にゆっくり落ちていく。
「きれいだなあ」
大きく息を吸って学校に向かった。
正門をくぐり、昇降口へ向かう。
下駄箱で靴を履き替えクラス発表がされている掲示板へと向かう。
「あら、結花さん、ごきげんよう」
スタスタと歩いてる途中に後ろから声が聞こえ振り返る。
柔らかく、ふんわりとした綿のような優しい声音。ずっと聞いてきた落ち着く声音。
あたしに挨拶をした方は、幼稚園からの長い幼なじみの柳下えみりさん。
髪はふわふわでカールが巻かれており、キラキラな金色な髪。少し目尻が下がっていて優しい印象。少し身長は低めでとっても愛らしい。
「ごきげんよう、えみりさん」
すっかり顔馴染みになった同級生にご挨拶を交わしわたしたちは掲示板へと視線を向けた。
「わたしのクラスを拝見したいのですが、まだちょっとダメそうですかね……」
どうにもこうにも、掲示板の前が人だかりで確認出来ない。
「あたし、確認してくるからちょっと待ってて」
鞄をえみりさんに渡し、掲示板へ進む。
クラス発表の紙は少し高めに掲示されている。
平均的な身長のあたしだけど、ちょっと背伸びしたら確認出来そうに思えた。
申し訳ない、と心の中で謝り前の生徒の肩に手を置き、倒れないように支えながら背伸びして名前を見る。
「おっ、今年もえみりと一緒のクラスみたいだね」
ホッと一安心した所で人だかりを縫うようにくぐり抜け、えみりの元へ向かった。
「お待たせ。えみりさん。どうやら今年も同じクラス見たいだよ。2年2組だって」
伝えた途端、えみりはお花が咲いたように笑顔になって。手をポンッと合わせて。
「良かった!今年もご一緒出来ますね!これで楽しい日々が確定しましたわ。うふふっ」
とっても不安だったのだろうなと思った。
「では、教室へ参りましょうか。」
「うん、そうだね」
スッと手を繋いで、肩をトンッとぶつけて一緒に教室へ向かった。
えみりはとっても笑顔だ。
このスキンシップは中学に上がった時から時々あったから、あまり気にしていない。
最初はびっくりした。いきなり手を繋いできたから反射的に振り払ってしまったのだけど、その時に「これは友情の証ですわ。手ぐらい繋いでこそ親友でしょう?」とまで言われてしまったので、そういうものなのか、と言われるがまま手を繋いできた。
ただ最近は、スキンシップが多めに感じる時が度々ある。
そう、感じるだけかもしれないけれど……
手を繋いだまま、教室のある3階へ向かう。
1学年の教室は2階。2学年の教室は3階。3学年は4階。
学年が上がるにつれて階層も上がるのがうちの学校。
4階から見えるこの時期の景色が凄くきれいらしい。
正門から校舎まで一直線に桜の木がありその桜が舞う時がとっても好評で。優雅とか言われてるっぽい。
そんなことを思いながら、わたしたちは2年2組へ足を運んだ。
教室に入り、周囲に目を向ける。
「ごきげんよう、結花さん、えみりさん」
岬舞香さんだ。岬さんは去年同じクラスで学級委員長をしていた。いわゆる優等生ね。
「ごきげんよう。岬さん」
「ごきげんよう。舞香さん」
「同じクラスになれてとっても嬉しいですわ! これからよろしくお願いいたしますね!」
とっても元気で活発な岬さんはクラスのムードメーカー的存在。
岬さんがいるだけでクラスがとっても元気になれる。去年の経験則ね。
「ええ、こちらこそ」
「あたしもよろしくね」
岬さんは別の生徒に駆けつけて挨拶をしていった。
「それでは、結花さん。わたしは席へ行きますね。また、後で」
「うん、また後でね」
えみりは笑顔で手を振って席へ向かった。
あたしも手を振って別れた。
席へ向かおう。
これから短いホームルームと担任の挨拶をしてから体育館で始業式がある。
今日は授業が無いため始業式が終わったら、帰りのホームルームをして解散となる。
窓際の席だったので担任が来るまで外の景色を眺めて暇を潰した。
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