騎士訓練③
鎧や小手をつけ、それぞれ武器を手にする。
実践に近い形と聞いたが、鎧も武器もお互いだいぶ違う。
ティタンはフルプレートのようだが、右手はやや軽めで関節部分は動かしやすく装備が少ない。
使う武器は大剣と小剣。小剣は腰に差し、メインは大剣のようだ。
対するキールは槍。左腕には盾がついており、鎧もティタンにくらべてやや小ぶりである。
実践の際の二人の姿はこのようなものなのだろう。
「始め!」
合図と共にキールが仕掛ける。しなやかな槍はティタンの動きをかい潜り右腕の関節を狙う。
フルプレートの場合弾かれる場所が多いため、少ない露出箇所を狙うようになる。
腕を引き、鎧の部分で弾いてからティタンも大剣を振るう。
当たれば鎧共々骨が折れてしまいそうな重厚感で、そして思ったよりも素早い動きだ。
しかしキールは素早く槍を引き後ろに跳ぶ。着地と同時に身を屈め下から突き上げるように槍を動かした。狙いは顎のようだが顔を引き足で蹴りを繰り出す。
それを左手の盾で受け、ティタンの力を利用して反動で後ろにくるりと避ける。
流れるような動作は一流の殺陣のようだ。
ティタンの動きもキールの動きも凄い。
こんないいものが見れるなんてと、神に祈りながら瞬きもせずに見つめていた。
愛する人に見られながらする訓練は緊張に満ち溢れていた。
もしこれが実践ならば、自分が負けてしまえば彼女が危なくなるのだ。
絶対に負けるわけにはいかない。
「ハァー!」
鋭い突きが連発される。さすがにガードするしかなく、押され気味になる。
一度槍を引き、体をひねると今までと違った突きが放たれた。
体をひねることでパワーを乗せ、鎧をも貫く一撃になる。
「っ!」
大剣ではガードが間に合わないと腰の小剣を抜く。左手に持った小剣で槍を受け流す。
刃と刃があたる場所が火花を散らしているが、そこを起点にぐるりとティタンは身体をひねって大剣をキールのボディに叩き込んだ。
「かはっ!」
鎧の上からでも物凄い衝撃を受け、ついにキールが膝をついた。
「勝者、ティタン!」
二人の素晴らしい攻防に拍手が湧き上がる。
「まだ駄目か」
「いや、危なかった。魔法ありだったら負けていたな」
膝をついたキールに手を貸し立たせるが、体を痛めたか脇腹を抑え呻く。
さすがにティタンも手が抜けなく、加減できなかったのであろう。
「馬鹿力め」
「済まなかった」
そそっと近寄りミューズが手を翳す。
「失礼しますね」
柔らかな光で照らされる。見る見るうちに痛みもとれ、すっかり良くなった。
「治癒魔法も使えるのか」
「一応魔術学校に通っていましたので」
ティタンの方へ向き直り、胸の前で両手を握り熱い戦いだったと興奮気味に話す。
「本当に凄かったです!」
そんなミューズの頭をポンポンと撫で、鎧を外していく。
「あとは頼んだぞ、キール。俺はミューズを送ってくる」
「わかった。勝利の報酬は?」
ミューズは顔を赤くする。
こんな、大勢の前でなんてさすがに恥ずかしい。
「屋敷に帰ってからゆっくり堪能するさ、お前らに見せるのは勿体ない」
ニカっと笑い武器や鎧を部下に渡す。汗を拭くタオルを1枚もらうとミューズの手を引いて鍛錬場を後にする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます