第79話 地上最強 


 凄まじいパワーが全身に溢れる。

なんか変な感覚だ。


 体に血が流れていないように感じる。

心臓の鼓動を感じない。

まるで人間じゃなくなったみたい。


 でも体は燃えるようにあつい。

全身の毛が逆立つ。



「鳴神!」



仙撃の声でふっと意識が戻る。



「なれたかもしれないぞ、”覚醒”に」


「あ、ああ・・・」



 仙撃たちは俺の覇気に圧倒されているのか後退りしている。

自分の体を確認するが、俺自身に変化はないようだ。


 しかし俺の能力が進化しているのを感じる。

覚醒した俺は、人間という枠組みからは外れたのだろう。



「すまないが、東雲が限界だ!じきに”不可侵領域”が解かれる!」



そうか、今俺たちは東雲の不可侵領域の中にいるんだった。


 

「わかった!俺に任せてくれ!みんなは少し離れて見ていてくれ!」


「ダメです!私たちもあなたの近くで・・・」



國咲が言う。



「いや、大丈夫だ國咲。これは思った以上に大規模な戦いになりそうなんあだ。近くにいるのは危険だ」


「・・・わかりました」



渋々國咲が下がっていく。



「よし!じゃあ覚醒した俺の力を見せてやるか!東雲、能力を解除しろ!」



 そう叫んだ瞬間、俺たちを包んでいた白い球状のものが消える。

途端にミツカミサキが突っ込んできた。


 鋭い牙で俺に噛み付いてこようとする。

しかし俺にはミツカミサキの動きがスローモーションに見えた。

遅すぎる、いや、俺の身体能力が向上してるのか?


 そんなスローモーションのミツカミサキに向かって飛び出し、

振りかぶって思いっきりぶん殴った。

その時の殴りかかった速さは人が出せるスピードではなかった。

後ろの仙撃たちからすれば、一瞬の出来事で何が起こったかわからないだろう。

俺の一撃がクリーンヒットし、ミツカミサキが地面を擦って遥か向こうに吹っ飛んでいく。



「これはやべーや!」



 自分の進化に驚いていたが、遠くに飛んで行ったミツカミサキは唸り声をあげ、

地響きとともに走ってきた。



「向かってきますよ!」



 國咲の声が聞こえる。

わかってる、という風にエネルギーの剣を出現させ、

ミツカミサキに向かって振る。


 すると奥の山とともに大地がざっくり割れ、

空に先ほどまであった雲が遠くまで2つに別れている。


 しかしミツカミサキも真っ二つになっていたが、

その状態のままこちらに走ってきていた。

目の前に来た時には完全に再生していた。


 グァァァァという唸り声と共に、

前足を振りかざしてくる。

俺は避けなかった。



「危ない!」



 仙撃の声が聞こえた。

グサッとミツカミサキの鋭い爪で体を貫かれる。

あぁ!と誰かの声が響く。



「”覚醒”が何かわかった。覚醒とはつまり、人間から完全に能力者になること」



 俺の体はミツカミサキの鋭い爪で心臓付近を貫かれていた。

しかし、血は出なかった。

それどころか、もう俺の体には血は流れていなかった。

覚醒状態の俺の肉体はエネルギーの集合体になっていた。



「これはすごい・・・まさに神の領域ですね」


「そりゃあ世界の国々が能力者を兵器化するわけだ・・・」



 後ろから唖然とした呟きが聞こえる。

ミツカミサキは戸惑っているのか動きが止まっている。

そりゃそうだ、こいつにはもう俺を倒す術がない。


 その隙に、正面から思いっきりエネルギー砲をぶちかます。

放った一撃は全てを抉り取るような破壊力だった。

あんなに苦戦したミツカミサキが今は弱々しく感じる。

まるで子供と遊んでいる大人のような感覚。


 目の前にはミツカミサキの顔の肉片だけが地面に転がっている。

その肉片にはかろうじて壊されなかったコアがあった。

そしてそのコアを中心に再生を始めた。



「鳴神!とどめを!」

 


 仙撃がそう言ったが、

俺はとどめをささずに再生を見届けていた。


 それは余裕から来る行動だった。

するとミツカミサキは完全に再生し、

俺に向かってきた。


 完全に無策の突進。

ミツカミサキも悟ったのだろう、どうすることもできないと。


 瞬間、天空から降ってきた巨大な剣がミツカミサキの体を貫いた。

地面深くまで突き刺さっており、抜けることはない。

さらに地面から飛び出た鎖がミツカミサキに絡みついて体を縛り上げている。



「覚醒するとこんなこともできるんだよ」



 ミツカミサキは動いている。

しかし、縛りが解かれることはない。



「前の俺は大地から体にエネルギーを集めてた。でも覚醒状態になってもう体に集める必要はなくなったんだ。わかるか?世界に溢れるエネルギーを自由自在に使えるってことだ!」



 ミツカミサキは動けない。

その間にミツカミサキに向かって右手を構える。



「この一撃は重いぞ」



それはとどめの一撃だった。



”超絶火力砲”

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