第43話 ex. 小頭部の子たち
ある日の放課後、
少し街の方のコンビニへ出かけようと寮を出た。
小頭部の方まで行くと男女混じった子供たちがキャッキャとボールで遊んでいる。
するとその遊んでいたボールがコロコロと転がってきた。
転がってきて足に当たったボールを拾う。
途端、このボールで遊んでいた小頭部の子たちがダダダー!と集まってくる。
小さい子たちがキラキラした笑顔でこちらを見ている。
「はいこれ、ボール」
子供たちにボールを渡す。
「おにいちゃん!ありがとう!」
小さい子たちがペコリとお辞儀をする。
・・・可愛い。
そして立ち去ろうとするとなぜか服の裾を掴んで止められた。
「ねぇ!一緒に遊ぼう!」
え?
「いや、忙しいのよ〜。ごめんね〜」
そんな社交辞令で立ち去ろうとする。
「嘘つき!ただ街のコンビニに行くだけでしょ!」
一人の女の子が言った。
な、なんでわかるんだ!?
何かの能力か!?
気づけば逃げられないように周りを囲まれている。
中には俺の太ももにがっちり抱きついている子もいる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今、俺は小頭部の寮前ですごく年が離れた子供たちとボールで遊んでいる。
「なんでこんなことに・・・」
通り過ぎる中等部や高等部の学生からの冷ややかな目線を感じる。
違うんです・・・俺も嫌々やってるんです・・・
でもそんな叫びは届かない。
瞬間、頬に思いっきりボールを当てられる。
「ぶへぇ!何しやがる!」
ついギロッと睨んでしまったが子供たちは何事もなかったようにヘラヘラとしている。
「ひ、人にそんなに強くボールを投げたらダメだよ〜」
「うん!わかったー!」
そう言いながら違う子にボールを渡した。
その子も俺にボールを当てようとしている。
いつの間にか俺が的みたいになってんじゃねーか!
その子が投げたボールはへろへろとゆっくりなボールだった。
ふん!まだまだ子供だな!
そう思った矢先、
ボールが高速に回転し始め、恐ろしいスピードで俺の鳩尾にクリーンヒットした。
「あがぁ!」
気絶しそうな衝撃から思わず地面に膝をついて倒れこむ。
ぐっ!能力を使いやがったな!
子供があんなボール投げられるはずねぇ!
くそ!こうなったら大人の怖さを教えてやる!
俺もまだ高校生だけど!
「ちょっとお兄ちゃんにボール貸してくれる?」
警戒されないように優しく笑顔で問いかける。
その笑顔とは裏腹に心の中では小頭部の子に思いっきりボールを投げてやろうと思っている。
「いいよ!」
無垢な笑顔で答えられ、
ボールが渡される。
はははは!反撃開始だ!
ボールを高く掲げ思いっきり振りかぶる。
みとけ・・・これが高校生だ!
ボールを小さな男の子に向かって全力で投げた。
ボールは勢いで形をぐにゃんと変えて男の子を襲う。
しかしボールはなぜか反転し、
さらに勢いを増して俺に向かって飛んできた。
ボールが腹を直撃する。
体がひらがなの「つ」のように曲がる。
「くっ・・・」
言葉にならない痛みを受け止める。
ダメだ・・・俺はここで殺される・・・
子供たちはまだまだ元気いっぱいで、
既にボールを構えている。
諦めかけていた時、
向こうを歩いている流星を見つけた。
「りゅ、りゅうせ、い・・・たす・・・けて・・・」
俺の悲痛な叫びを聞いた流星が高速で俺に駆け寄ってくる。
「ど、どうしたの!?」
倒れこむ俺の体を流星が支える。
「や、やられた・・・」
「え、この子供たちに?」
「こいつらは子供じゃない・・・悪魔だ・・・」
「ど、どういうことなの」
子供たちが近寄ってくる。
「お兄ちゃん死んじゃうの?やだよ・・・」
子供たちが泣きそうになっている。
お前たちがやったんだろ!
「だ、大丈夫だよ!このお兄ちゃんはちょっと疲れちゃっただけだから!じゃ、じゃあね!」
流星が俺を抱えて走り出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺と流星の寮室のベッドに倒れこむ。
「助かった・・・あいつら・・・加減をしらねぇ・・・」
「能力者だからね・・・」
それから俺は小頭部の前を通るのが怖くなった。
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