第21話 学園の真の目的
俺たちは持てる分だけの大量の料理やお菓子を抱え、テントに戻った。
テントに料理を配りに行くと、夜遅くにみんな眠そうな顔をしていたが、
盗んできた料理を見るとみんな飛び起きて喜んでた。
俺も流星と赤坂の分の食材を持ってテントに戻る。
「おかえり日向くん!」
「おう流星!見てわかる通り大成功だぞ!」
「すごい!」
流星がキラキラした目で俺を見ている。
盗んできたものをテントに広げる。
「おい、いらないのか?」
寝転んでいて興味なさそうな赤坂に話しかける。
「・・・いらねぇよ」
ぶっきらぼうに返される。
「あっそ、じゃあ俺が食べよーっと!」
赤坂の前でわざとらしく料理を頬張る。
「あー!美味しい!こんなの食べないなんてもったいないわ!な、流星!」
「う、うん。そうだね・・・」
苦笑いしている流星に反して俺は赤坂に見せつけるように頬張る。
すると、赤坂が飛び起きた。
「やっぱり俺にも分けろ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「にしてもお前の火の能力、すごいよな。普通にA組レベルじゃないか?」
赤坂を見る。
食べ終わり、寝転んで寝る体制に入っている。
「火じゃなくて炎だ。俺の能力は”紫炎”」
「あ、そうなんだ」
こだわりがあるんだな。
まあよくわからないが、炎が出せる能力ってことか。
「っていうか、C組でも強い能力のやついっぱいいるよな」
「うん、そうだね。神藤さんの”交信”とか、仙撃くんの”衝撃”とか」
「だよなー。A組もすげーけど、C組もA組に上がれる可能性はあるよな」
本当にそう思う。
今日の王様ゴールではコテンパンにやられたけどな。
「能力が”兵器”として使えるかが重要なんだよ」
寝転んでいる赤坂が呟いた。
「兵器として使える?どういうことだよ」
赤坂からの返事はない。
兵器?意味がわからない。
「なあ、説明してくれよ」
「・・・嫌だ」
「おい、飯分けてやっただろ?」
それを聞いた赤坂が嫌そうに起き上がってきた。
「そもそも、学園の目的は”能力者を兵器として育てる”ことだよ」
「兵器として育てる?そんなの初耳だぞ」
「そりゃそうだ、わざわざ言うわけないだろ。でもみんな暗黙の了解で知ってる。まさか知らなかったのか?」
赤坂が呆れた表情をしてこちらを見る。
「え、知らなかった。流星は知ってたか?」
「いや、僕も初めて聞いたよ」
2人とも初耳の様子だった。
「今、戦争は銃や戦車を使って行われてるだろ?」
「あ、ああ・・・そうだな」
赤坂は関係なしに話を進めていく。
「強い能力者には銃や戦車、ミサイルみたいな”おもちゃ”は効かないんだよ。今日だって見ただろ?A組の能力者たちの桁外れで破壊的な能力を」
確かに・・・龍に変身できたり、動きを止められたり。
「そんな能力者を戦争で使わないわけがないだろ?それに、能力者を倒せるのは能力者だけなんだよ。だから今、世界中で能力者を兵器として育成してる。この学園もそういうことだ。日本中の能力者を一箇所に集めて外部から守りつつ兵器として育てていく。だからABCなんて能力のクラス順があるんだよ」
能力者の兵器化・・・
でも、赤坂の話を聞いてあまり驚かなかった。
薄々わかっていたのかもしれない、この学園がそういう場所だってことを。
「けど、C組は卒業すれば研究所送りなんだよね?」
流星が聞く。
「そうだ。C組は戦争で使えないような弱能力者の集まり。だから研究所で能力の解明のために実験として使われる。つまり、散々身体中痛められて死ぬってことだな」
恐ろしすぎる。
「でも、C組にだって戦争でも使えそうな強い能力者がいるだろ?」
「まあ多少はいるが、俺も含め”互換型”の能力者ばかりだ」
”互換型”・・・
仙撃が言ってた能力の種類か。
替えがきく能力のことだ。
「例えばお前らの友達の神藤ってやつの”交信”だって、兵器としては使えない。そんなのトランシーバーでもあれば連絡が取れるからな」
確かに、戦争においては使えないか・・・
今までは単に能力の強さでABCって分けられると思ってたけど、
実際は能力が兵器として使えるかどうかも重要なのか。
「C組には”互換型”以外の能力者もいるが、どれも兵器としては使えない奴らばっかりだ。それにA組の圧倒的な破壊力には劣る。見ただろ?”七罪聖夜”を」
”七罪聖夜”・・・
A組との戦いの最後の時、俺は七罪聖夜にコテンパンにやられた。
あれなら勝ち目はない。
「あいつが本気を出せば軍隊一つ消し飛ぶぞ。能力者は人を超えた存在。言うなれば”神”に近い存在なんだよ」
七罪聖夜と俺たちじゃレベルが違うのか。
「なあ、もっと能力について教えてくれよ」
「嫌だ。それに、すぐにわかる」
そう言うと赤坂は眠ってしまった。
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