第203話 追加戦力
フェルナンドが指定した時間まで残り1時間。
それまでに2つの爆弾を何とかしなければならないのだが、現状2つ目の爆弾は王城に仕掛けられているという情報以外のことは何も分かってはいない。
一応こちらの有利な材料としては、敵の戦力をかなり削る事ができており俺達が誰かと戦闘になったとしても時間をかけずに無力化できると踏んでいる点だ。
ただ、フェルナンドの策略にかき回されているのは否定できず、ルザルクが向かう玉座でもどんな罠が仕掛けられているかは未知数だ。そんなところにルザルクを一人で行かせるのはさすがに悪手だろう。
爆弾の捜索と隠密状態でのルザルクの護衛か……。
「となると……あの二人を呼ぶしかねぇな」
【星覇】のメンバーで人前での活動ができ、尚且つ高い機動力や隠密行動が行えるのは、【黒の霹靂】を除くとあいつらを置いて他に居ないだろう。
≪こちら阿吽だ。メアとチェリーは今なにしてる?≫
≪はいはーい! 私たちは、バルバルさんの指示でプレンヌヴェルト街の警備をしてまーす!≫
≪何か、お困り……ですか?≫
≪あぁ。今から最速でアルラインの王城に来るとなると、どれくらいかかる?≫
≪帰還転移、使って……、全力で移動すれば、20分くらい……です≫
≪今すぐ行きますかぁー??≫
≪あぁ、王城に到着したら教えて欲しい。あと、こっちの現状は移動中にシンクから説明してもらってくれ≫
≪わっかりましたー! すぐ動きますねー!!≫
≪了解……しました≫
シンクの進言で二人を育てておいて良かった。
チェリーとメアの二人は、シンクやネルフィーと共に沈黙の遺跡へとレベル上げに向かい、それぞれが大きくレベルを上げ、シンクの宣言通り1カ月で進化まで果たした。
そして、進化した事で大きくステータスが向上しただけでなく、スキル構成も目を見張るほど強化されていた。
レベル的にも俺達にかなり近づいてきており、戦力として十二分と言えるほどになっている。
二人の進化後ステータスはこんな感じだ。
<ステータス>
【名前】チェリー
【種族】ガラルヴァルグ
【状態】
【レベル】55
【属性】火・土
【HP(体力)】9800/9800
【MP(魔力)】430/430
【STR(筋力)】113
【VIT(耐久)】96
【DEX(器用)】12
【INT(知力)】20
【AGI(敏捷)】115
【LUK(幸運)】11
【称号】従属者
【スキル】
・人化
・フレイムナックル
・火属性魔法(Lv.3)
・土属性魔法(Lv.1)
・
・
・拳闘術(Lv.5)
<ステータス>
【名前】メア
【種族】
【状態】
【レベル】59
【属性】闇
【HP(体力)】5450/5450
【MP(魔力)】1500/1500
【STR(筋力)】30
【VIT(耐久)】55
【DEX(器用)】156
【INT(知力)】93
【AGI(敏捷)】46
【LUK(幸運)】10
【称号】闇に堕ちし魔獣
従属者
【スキル】
・人化
・暗視眼
・闇属性魔法(Lv.6)
・
・
・操糸術(Lv.6)
前回のステータス確認でも思ったが、この二人のステータスはマジで対極だ。
まずはチェリー。こっちは何と言うか……マジでピーキーな性能をしている。
アイツの性格がそのまま反映されたような「とにかく力押しで全て解決~♪」みたいな雰囲気が、ステータスからもスキルからも滲み出ている。
チェリー
新たに獲得した
それに、この尖り切った強化はある特定の場面や敵に対して大きなアドバンテージを取る事ができる。特に全てのステータスが平均的なオールラウンダーがチェリーと対峙した場合、圧倒的なパワーとスピードのゴリ押しで、なすすべもなく押しつぶされる未来が待っているだろう。
ちなみに『ガラルヴァルグ』という種族は、魔物図鑑に載っていないためランクは不明だが、ステータスから見るとSランク相当と考察している。
次にメアなのだが、まず種族が『
その特性は闇属性魔法の中でも精神攻撃や影移動を得意としていると書かれていた。相手に虚像を見せたり、自分の姿を知覚させないようする“幻影魔法”を扱う事もできるらしい。
ちなみにこの魔物、スフィン大陸の長い歴史上でもその姿が確認されたのは数回だが、前回出現した200年前は300人規模の討伐隊を組織したにもかかわらず、その半数が死亡し生き残った者も多くが身体や精神に重大な後遺症を負ってしまったという逸話がある。それほどまでに対集団戦闘に於いて有利となる精神攻撃を持ち合わせているという事だ。
元々Sランクの魔物であるナイトメアからの進化であり、俺の期待に応えてくれたわけだが……、たった2階の進化で伝説級であるSSランクにまで到達してしまったメアは、かなり特殊な個体なのかもしれない。
今回チェリーにはその機動力を活かして爆弾の捜索を、メアには得意な闇属性魔法を使いルザルクの護衛を秘密裏に行ってもらおうと考えている。
「ってか、今回の
星覇の課題、それは単純に動かせる人材の少なさだ。
今回のように人目に付くところでの活動は、【人化】のスキルが使えない魔物達は候補から完全に除外される。獣人やエルフ、ドワーフなどの亜人達も星覇には多く在籍しており戦闘に関してもクエレブレからの指南を受け始めてはいるが、まだレベルはそれほど高くはないし、実戦経験も少ない。
こんな時に禅が居てくれたらかなり助かったのだが……あいつはスフィン7ヶ国協議会の後、更なる武とモフモフを求めて新たなる地へと旅立っていった。
行先は決めていない放浪の旅のようだが、目標はハッキリしていると言っていた。ちなみに、俺との主従契約はその時に解除している。
人員に関しては、今後の課題として何かしらのテコ入れを考えていった方が良さそうだな。
……っと、思考がズレて行ったな。今は爆弾の捜索だ。
一旦今の状況と動ける人員を整理すると、ネルフィーには爆弾の解体補助、シンクには王城までのルザルクの護衛を任せるつもりだ。
そうなると、2つ目の爆弾の捜索に関しては、俺・キヌ・ドレイク・チェリーの合計4名で行うことになる。
そして、見つけた爆弾を最速で処理する必要があるわけだ。
冷静に考えると、その難易度の高さを否応なしに実感してしまう。だが、それでもやるしかない。
「兄貴、とりあえず玉座の間がある5階からここ1階までは捜索したっすけど、何の手掛かりも無いっすね。一応、見つけた使用人たちの避難も同時並行でやってるっす」
「となると、地下……か? ってか地下牢にアルト国王が捕まってるんだっけ?」
「ネルフィーねぇさんからの情報では、王城の地下牢最奥に国王が幽閉されているって言ってましたね!」
「なら、俺が地下牢を探しに行くかな」
「俺はどうすれば良いっすか?」
「ドレイクは飛行が使えるからな。外周の捜索と同時に避難誘導を引き続き頼みたい」
「了解っす! じゃあチェリーが到着したら手分けして外周を捜索するっすね!」
ドレイクと分かれた俺は、地下牢へと続く階段へと足を踏み入れる。
少しでも事態が好転することを信じて。
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