第192話 ブライドとの再戦④


 吹き飛んで行ったブライドの方を見ると数軒先の家の壁にもたれかかり、こちらを見る表情からは驚愕を隠しきれていない。というか正直、自分でも今の動きに驚いている。瞬間移動とまではいかない迄も、気が付いた時には視界が変化している程の速度で動いたわけだ。そりゃあ相手からすれば突然姿が消えたようにも見えたのだろう。


「動きに緩急つけるとこんな事になるんか……、やっぱゾンビ先輩はすげぇわ」


 嬉しいことに、これがスキルとして俺の身体に定着した。となれば、制御しきるのは難しいだろうが、最初よりも発動するのに苦労することもないはずだ。試しにブライドの目の前に移動するイメージで【雷動】を発動してみる。だが、動いた後の位置はイメージしていたよりも3mほど手前。やはりまだ制御しきるには練習が必要そうだ。

 だが、ブライドからすれば失敗したようには見えていないらしい。


「貴様……今、何をした!? この俺が、目で動きを追えないなど……」


「お前が地下牢で呆けてる間に、俺達はさらに強くなったって事だ」


「くそっ、だがダメージはそれほどでもない。今の俺の耐久値ならば、貴様の攻撃力を凌げるようだな」


「ハハッ。お前さ、それマジで言ってんの?」


「……どういうことだ?」


「俺が狙ってたのは、お前の身体へのダメージじゃなく、その鎧の破壊だ」


 俺がそう言うと、ブライドが装備していたアスピレーションソウルアーマーはパラパラと砕け落ち、ブライドの上半身が露わになる。地面に落ちたアーマーからは黒色の靄が立ち上り、鑑定してみると完全に破壊できたことが分かった。


「なっ……、っく!」


「呪いの装備も残り4つだ。まぁ、すべて破壊する前にお前が死んじまいそうだけどな」


「……まぁいい。どのみち俺の命はもう10分も持たんのだろう。これでようやくふっ切れた」


「そうだな。このペースでHPが減っていけばそんなモンだろ。やっと本気出す気になったか?」


「あぁ。【魔人化】は身体にも精神にもかかる負担は大きい……。それに、元の身体には戻れない可能性もある。……だが、そんなことはもう関係ない!」


 ゆっくりとブライドが立ち上がり、曇天の空を見上げるとゆっくりと口を開いた。


「……行くぞ、阿吽、【魔人化】。ッガハっ、アァぁァァ!!!」


 バサッっとブライドの背から黒色の翼が生え、目の色が赤く変色していく。また、ドクンドクンと全身が脈打ちながら徐々に身体が大きく、浅黒く変化していく。

 俺は少し様子を見ながら、ブライドのステータスを確認する。



 <ステータス>

【名前】ブライド・イシュロワ

【種族】魔人

【状態】激情・熱痛・出血・燎原之火りょうげんのひ・魔人化状態

【レベル】54

【属性】火

【HP(体力)】3502/9900

【MP(魔力)】860/1800

【STR(筋力)】820

【VIT(耐久)】100

【DEX(器用)】58

【INT(知力)】316

【AGI(敏捷)】984

【LUK(幸運)】18

【称号】魔ノ者との契約者

    剣帝

    豪炎

    呪われし者

【スキル】

  ・魔人化

  ・燎原之火りょうげんのひ

  ・フレイムソード

  ・フレイムボール

  ・フレイムランス

  ・体術(Lv.4)

  ・剣術(Lv.6)


【装備】

  ・魔剣オルグヌス(呪):鑑定不可

  ・ブラッディーグローブ(呪):鑑定不可

  ・ソーンブーツ(呪):鑑定不可

  ・デビルズリング(呪):鑑定不可



 改めて感じるが、今のブライドのステータスはとんでもないな……。

 ここまで何度もブライドのステータスを確認していて分かった事だが、【魔人化】のスキルはSTR筋力VIT耐久AGI敏捷の3つの値を2倍にするというものである可能性が高い。

 呪いの装備が2種類破壊できているため少し基礎ステータスは落ちているものの、強化バフスキルである燎原之火りょうげんのひと魔人化の2重強化バフで文字通り化物のようなステータスになっている。


 さて、ここからが本番……、そしてコイツとの決着を付ける最終局面だ。残り4つの呪いの武具はもう無視でいい。

 ステータスの鑑定結果から見てもブライドに隠し玉はもうない。だが、単純に今の俺の2倍近いステータスがある。さすがに今の2重バフではブライドとのステータスの開きがあり過ぎて対応しきれない可能性が高い。


 ……ならば俺も使うしかないな。奥の手とっておきってやつを!


「不思議なもんだな、ブライド。お前の残された時間は10分、俺もこのバフが切れるのが10分後だ……。さぁ決着を付けようぜ! 【祭囃子まつりばやし】っ!!」


 心臓の鼓動が、太鼓のように力強く一定のリズムで脈打つ。それに合わせ、頭がどんどんクリアになり周囲の動き全てがゆっくりと感じられる。ただ、ステータスだけで考えたらブライドも同じような状態なのだろう。

 まぁ、この状態になっちまったら反動で10分間という効果時間後に俺のステータスが半減することなんてどうでも良くなっちまう。どうせ決着はそんな長引かないだろう。

 それよりも、現状の把握をしておく方が優先だ。今の俺のステータスは……。


<ステータス>

【名前】百目鬼 阿吽

【種族】阿修羅

【状態】雷鼓・疾風迅雷・祭囃子

【レベル】64

【属性】雷・闇

【HP(体力)】6250/6300

【MP(魔力)】1030/1260

【STR(筋力)】978(基礎値140)

【VIT(耐久)】150(基礎値75)

【DEX(器用)】60(基礎値30)

【INT(知力)】278(基礎値139)

【AGI(敏捷)】988(基礎値142)

【LUK(幸運)】35

【称号】迷宮の支配者Ⅲ

    雷帝

【スキル】

・鉄之胃袋

・痛覚耐性

・体術(Lv.6)

・刀術(Lv.6)

・美食家

・鑑定眼

・疾風迅雷

・雷鼓

・雷属性魔法(Lv.6)→(Lv.7)

・闇属性魔法(Lv.1)→(Lv.4)

雷動らいどう(NEW):自身の移動速度を雷属性魔法によってコントロールできる。(消費されるMPは最高速度と距離に比例)

・空駆け

・涅哩底王(技巧)

・探知

・祭囃子



 3種類のバフを重ね掛けた状態でステータスを確認したのは初めてだが……上昇率がすげぇな。自分でも少し引くほどのステータスだ。SSランクの魔物にすら匹敵する数値だろう。

 それに、奇しくもすべてのステータスがブライドと似たような値となっている。二人ともここまでステータスが跳ね上がっていれば、互いの差など有って無いようなものだ。


「さて、最終ラウンドといこうじゃねぇか!」



―――――――――――――――――――――――――――――――

どうも!幸運ピエロです★

まだ第9章の途中ですが、次章(第10章)の構成を大幅に変更する兼ね合いで、少々執筆や編集等にお時間を頂きたく、次話の投稿を2週間後の11/17(金)の予定としております!


ちなみに、次の章は結構長編となりそうな予感がプンプンしております!笑

今後もハイテンションでヒャッホイしながら執筆していきますので、引き続き応援していただけたら嬉しいです♪

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