第56話 カウンターセンス
シンク勝利のアナウンスが流れると、会場に割れんばかりの歓声と
「やっべぇ……アレ初見なら俺も攻撃食らう気がするぞ」
「でしょ!? シンクねぇさんすげぇんっすよ!!」
「ん。シンク強い」
『こ、これが! Sランク同士の戦いだぁぁ!! 我々はとんでもないものを目撃しているぅぅ!!』
今年から導入された大型の魔導具による特殊結界があるお陰で、出場者たちは文字通り死力を尽くして戦える。
昨年までの寸止めや加減した魔法攻撃ではなく、全力の勝負。それは、見ている者を間違いなく熱狂させるものだ。
出場選手からすれば、そこに恐怖や気後れ、戦慄などの感情が入り込む余地になるが、俺達にとってはそれすらも好材料だ。
「次の相手はAランクか。純粋な魔法職だな」
ドダイドがリング外に運び出され、目を覚ますとすぐに次鋒へ情報を伝えている。本当に俺たちの事を全く侮っていないようだ。
それに、仮ではあるが一度死を体験しているにもかかわらず、その恐怖を抑え込み仲間へと即座に情報を伝えるドダイドの胆力には、感服せざるを得ない。
続いてリングに上がってきたのは女性上級魔導士ミモザだ。
ミモザは試合開始と同時に【フレイムボール】を発動した。
一気に勝負を付けにきたのか、かなり大きな火の玉がミモザの持っている杖の前方に形成される。
そして、その魔法が発動した瞬間、フレイムボールの目前に鉄の壁が現れた。シンクの発動した【アイアンウォール】だ。
ミモザは、突如出現した鉄の壁に驚愕してしまい、発動したフレイムボールを消すことができなかった。その結果……
――ドッゴォーーーン!!
フレイムボールはアイアンウォールにぶつかり、大きな爆発を発生させた。当然その一番近くに居たミモザは大きなダメージを受け、吹き飛ばされたところをシンクに追撃を受けて気絶した。
『勝者は、【星覇】シンク選手ぅぅ!!!』
「見事な魔法のカウンターだな。あんなんいつ覚えたんだ?」
「
「どんなカウンターセンスしてるんだよ、アイツ。1試合目の盾への変形のタイミングといい、完璧じゃねぇか」
「そうっすよ! 昨日、ギルドの訓練所で何回カウンター食らったか数えきれないっすもん! センスも勿論そうっすけど、努力してる時間も半端ないっす」
「確かにな。アイツ、今後化けるぞ。俺も負けてられんな!」
シンクは、その後の中堅戦、副将戦でも圧倒的な攻撃力・防御力と絶妙なカウンターで、危なげなく勝利を収めた。
そして、最後にリングに上がってきたのは、水の魔剣を扱う魔法剣士ミック。
リングの中央に来るとシンクに話しかけていた。
「シンクさん、ここまでの試合完璧にやられました……。しかし、僕があなた方全員を倒せばいいだけです!」
「御冗談が、お上手なのですね。
……万が一、わたくしを倒せたとしても、わたくしと同格の者が2人。わたくしより圧倒的な強者が2人も控えております。
わたくしに倒される方が、苦しまなくて済みますよ?」
「……それは、本当の事なのか? まだこの大会で一度も戦っていないあの二人が、あなた達三人よりも圧倒的に強いと……」
わぉ……ミックの勝利への気持ちを、一回の会話で削ぎやがった。
そういうのも覚えたのか?? ……いや、あれは天然でやってる感じか。
『それでは、先鋒シンクVS大将ミック、試合開始ぃぃ!!』
試合開始のゴングが鳴り響いた。
ミックは横に大きく移動しながらウォーターボールを4つ同時展開し、正確にシンクを狙い放ってくる。
しかし、シンクもウォーターボールやアイアンバレットでその魔法を撃ち落としながら、撃ち落としきれなかった水の玉も盾で防いでいた。
その隙にミックが魔剣に魔力を通しながら近づく。それに反応してシンクも冷静に盾を構えた。
両者の武具がぶつかり合い、爆音が響き渡る。
『ミック選手! 大将にふさわしい華麗な戦いっぷりだぁ! 近接での高火力攻撃に加え、ステップで移動しながらの水魔法攻撃には、さすがのシンク選手も今までのようにカウンターを合わせられない!!』
その直後……
「【アースバインド】」
シンクが土属性の捕縛魔法を発動すると、ミックの身体が不自然に硬直した。
その硬直時間の間にシンクは盾を巨斧に変形させ、横薙ぎに斬りはらうと、ミックは脇腹から体幹の中心部分にかけて大きく切り裂かれ、HPが全損。決着が付いたのだった。
『ええぇぇぇぇ!? いったい何が起きたのか、実況の私でも分かりません! しかし、ミック選手の胴体が大きく切り裂かれている!
一瞬ミック選手が硬直したように見えましたが……魔法なのか!?
いえ、それよりも……ミック選手がピクリとも動かない!!
シンク選手の5人抜きにより【星覇】の勝利だぁぁぁ!!!』
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