第36話 白鵺丸
俺が喜ぶ報酬? なんだろう、自分でも分からん……まぁ貰えるなら何でも嬉しいけどな!
「これはステッドリウス伯爵とレクリア冒険者ギルドからの報酬だ。金にしようかとも思ったんだが……こっちの方が喜びそうだったからな。俺やステッドリウス伯爵のコネを最大限使って仕入れてやった。感謝しろよ?」
そう言ってスパルズはマジックバッグから一振りの太刀を取り出した。
「これは!! マジか!! もらっていいのか!?」
「ガッハッハ! やはり目の色が変わったな! お前の子供っぽいところ初めて見たぞ。喜んでくれて良かった」
「ありがとう! 大切に使う!」
そう言ってスパルズから刀を受け取り鑑定してみると、
≪
「ちょ……とんでもねぇ武器じゃねぇか!!」
「お? 阿吽、お前鑑定できるのか?
これはレアリティー赤で
太刀は使い手が少ないが、お前の服装からしてコイツも扱えるんじゃねぇかと思ってな」
「ガキの頃に少しだけ使ったことがある程度だが、必ず使いこなしてみせるよ!」
「そんなに喜んでもらえると、苦労して用意した甲斐があるな。まぁ、これからもレクリアを頼むって意味もあるからな?」
「おう! あ、そういえばプレンヌヴェルトにダンジョンが出現した件ってのは?」
「その件については、内密なお願いもある……驚くかもしれねぇが、聞いてくれ」
「わかった。とりあえず内容を教えてくれ」
「実はな、ダンジョンは破壊可能なんだ。先日スタンピードが起きたろ? あれはミラルダのSランクパーティー【銀砂の風】がコアを破壊したことでダンジョンが消滅したんだ」
「そうだったんだな。それで?」
「ダンジョンを攻略しても、コアを破壊しないでほしい……」
「……その意図は?」
「ダンジョンってのは、適切に管理すれば大きな利益を生むことができる。現にこの1週間で4つのパーティーがレアリティー青の武具を獲得し、戦力を伸ばしている。
さらに、積極的なダンジョン攻略を行うために色んな街から冒険者が集まってくる。そうなれば、その近くにある街も潤ってくるわけだ……」
「そうだろうな。人が集まれば金が動く」
「その通りだ。それでな、蒼緑平原はレクリアの管轄なんだ。冒険者ギルドのプレンヌヴェルト支部をレクリア直轄で出すことも決まった。今後レクリアの街だけでなく、獣人村を発展させるためにもこのダンジョンは必要不可欠になる。
だが、コアを破壊されたらこの計画もパァだ。そこで、破壊しないでほしいってお願いになる。これはAランク以上のパーティーにしか伝えていない事案だ。他言も無用で頼む」
これに関しては、俺たちにとって最高の結果となっている。正直ここまで上手く事が運ぶとは思ってもみなかった。そのため少し唖然としてしまったが、スパルズは違う意味で捉えてくれたようだ。
「ちゃんと住民に危険がないよう最大限配慮はする! 獣人達を守りたい気持ちも分かる。だが……頼む……」
「わかった……スパルズには色々世話になってるしな。それにスタンピードが起きなければ安全ではあると思う。だから、冒険者ギルドの支部を早急に作って対応してくれるなら、俺たちはスパルズの意図を汲もう」
「そうか! 助かる! 支部はすぐにでも建設予定だから安心してくれ!」
「おう、よろしくな。んじゃ俺たちは少しモルフィアの森で狩りをしてからプレンヌヴェルトに戻るとするよ。シンクとドレイクはどうする?」
「俺は、できるだけクエストをこなしたいっす。俺だけCランクでカッコが付かないってのもあるんっすけど、まだレクリアに迷惑をかけた分の借りを返せてないっすから」
「わたくしもドレイクに付き添っています。監督も必要ですし」
「わかった。んじゃ二人はレクリアで引き続きクエストを受けてくれ。俺とキヌは少し狩りをしてからプレンヌヴェルトに戻ってる」
「了解いたしました」
それから俺とキヌは太刀の感触を試すために、モルフィアの森で少し狩りをしたのだが……白鵺丸の切れ味には驚愕した。
魔力を通して切ってみたら、ビッグスコーピオンの硬い外骨格がフルーツみたいに切れてしまったのだ。
俺もキヌも唖然とし過ぎて、後ろからレッドグリズリーに体当たりをされるぐらいには呆けていた。その後レッドグリズリーも一刀で首と身体がお別れしていたが……。本当に凄い武器を貰ってしまった。
その後、迷宮帰還でフォレノワールに帰還し、アルスとキヌと共にフォレノワールの改築を行なった。
次の目標は2か月後に行われるクラン対抗の武闘大会だ。余裕をもって移動する事を考えても1か月以上時間的余裕がある。それまではできるだけ全員がレベルを上げられるようにクエストを行いつつ、ダンジョンの改造を行っていくとしよう!
そうして、6週間の時が流れた。
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