風祭彰編(リメイク前)

パンツ出しゲーム

 平日の早朝、俺は他の生徒より早く登校している。用がある訳ではない。

早めに登校して、校内の人気のないところでのんびりしたいのだ。


人混みというか、人の集まりが苦手な俺。

登校時間というのは、生徒の集まりが学校に向かうものだ。


その中に入るのが苦痛で仕方がない。俺は集団生活が苦手なタイプなんだろう。



 俺がいる現在地の、少し先にある曲がり角から

女子生徒が曲がってきて、俺と逆方向に歩き始める。


俺の少し先を、女子生徒が歩いていることになる。


知っている女子生徒ではないので、気にせず歩き続ける俺だが

ふと目をやると、女子生徒のスカートがめくれているのに気付いた。


つまり、パンツが見え続けている状況で歩いているのだ。


幸いにも、今は早朝だ。周りに誰もいない。

なら、ささっと声をかけて何とかしてあげよう。


「なぁ、前の人。見えてるぞ」


「え?」

立ち止まってから後ろを振り返り、俺を観る女子生徒。


「そう。あんたのことだ」


これで彼女がスカートを直して、一件落着だな。

…と思ったら、この後、意外な反応をされた。



 「やっと声をかけてくれる男子が現れたか~。やるね、君」

女子生徒はスカートを直してから、俺に言った。


何だ? まるで、パンツが見えていることを知ってるような反応だな?


「実はウチ、罰ゲームでわざとパンツを見せていたんだよ」


「罰ゲームだと?」

何とも趣味が悪いというか、馬鹿馬鹿しいことをする…。


「そう。罰ゲームをね」


ふ~ん。じゃあ俺が指摘したから、この人の罰ゲームは終わったことになる。


「君のおかげでやっと終われる。ありがとね」


何でパンツを観てお礼を言われるんだ? 意味が分からない。


「あ…、そうそう。さっきのパンツね、アンダースコートだから」


アンダースコート…。簡単に言うと『見せパン』だったか。


見せパンって、であって、 じゃないだろ。



 「罰ゲームだとしても、パンツを出して外を歩くのはどうかと思うぞ」

露出狂って、女にもいるんだな。


「それはわかってるよ。だから早朝にやってるんじゃん。早いうちに終わらなかったら、ウチ本当に警察に通報されたかも…?」


今頃心配し始める女子生徒。そんなもん、やる前からわかるだろ。


「俺は何人目だったんだ?」

気になったので、訊いてみた。


「3人目だよ。1人目と2人目は、ニヤニヤしてパンツを見続けたから…」


正義感がある人でも、声をかけて逆切れされたくないから、見守るパターンはありそうだな。俺もその可能性を考えるべきだった。


「あんた、後ろの男子の行動がわかるのか?」

さっき『ニヤニヤしてる』って言ったよな? 何度も振り返ったら、不自然だし…。


「これだよ」

女子生徒は手の平サイズの手鏡を見せた。小さすぎて、使い道がなさそうだが…。


「ウチはこれで後ろを観ながら歩いてたの。だから後ろの男子の事がわかったんだ」



 さて、この変態女子生徒に関する疑問はすべて聞けた。

急いで立ち去ろう。関わりたくないからな。


「変態趣味はこれっきりにしろよ。じゃあな」


「待ってよ。罰ゲーム成功の証人が必要なの。ウチと一緒にここにいて」


俺の腕をつかむ女子生徒。何なんだよ?


「ふざけるな。これ以上、あんたの変態趣味に付き合う気はない」


「変態って…。女の子に2度も言う事じゃないでしょ。傷付くよ…」

俯く女子生徒。泣かれたら面倒だぞ。


「す…すまない」

納得できないが、謝っておくか。


「じゃ、ここにいて」

態度をコロッと変え、頼み込む女子生徒。クソ、騙された。



 女子生徒を振りほどくのは簡単だ。だがこの人は変態で、俺と同じ学校の生徒。

今後、俺の学校生活に支障をきたすかも?


だったら、証人になってから縁を切ったほうが安全か?


「仕方ない。証人になってやるよ。ただし、手早く頼むぞ」


「ありがと~」

女子生徒は素早くスマホを操作する。友達を呼んでるのか?


「…そういえば、ウチら自己紹介してなかったね」


する必要あるか? 早く縁を切りたい人と?


「ウチは2年の新海にいみめぐみ。よろしくね」


2年!? 嘘だろ。先輩じゃねーか。


「1年の風祭かざまつりあきらだ」


「君、1年だったんだ。先輩に何度も『あんた』って言ったよね?」


仕方ないだろ。今までの行動を考えて、どこに先輩要素があった?



その時、着信音が鳴る。新海さんのやつだ。


「もうすぐ、ウチの友達がここに来るって」


この人の友達って事は、間違いなく変態だよな?

ため息しか出ないんだが…。何とかなることを祈るしかないな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る