前にいる女子生徒のパンツを観たら、感謝された件

あかせ

服部慎一編

パンツは突然に

 ある日の朝、俺は高校に登校するため、上り坂を徒歩で登っていた。

前に女子生徒がいて彼女も徒歩だが、スカートの中を覗ける程の上り坂ではない。


そんな時、風で目の前の女子生徒のスカートがめくれた。

パンツはピンクか。今日はラッキーデーだろ。


女子生徒は振り返った後、俺に向かって歩いてくる。怒っているように見える。

ニヤニヤ顔を隠すために俺も急いで振り返ったが、後ろには誰もいない。


ヤバいじゃん。「パンツ観たでしょ!?」とか言われて

脅されちゃうんだ。きっとそうに違いない。


怒られるのを覚悟して前を向いた時、女子生徒の後ろにいる車が蛇行運転している。

その車は壁にぶつかった後に止まった。結構大きな音がしたな。


「今の何!?」

女子生徒はぶつかった車を観た後、急いでその車に駆け寄った。


俺も事故った車に駆け寄る。運転手さんは大丈夫か?


「俺は警察を呼ぶから、君は救急車を呼んでくれないか?」


「わかりました」

女子生徒は素直に応じてくれた。


2人で110番と119番にかける。警察か救急車、早く来てくれ。

運転手は事故った車の中だから、俺達にできることはない。


…やっと来てくれたか。これで一安心だ。

多少は事情聴取されるかもしれないが、気が楽になった。


気が楽になったら、隣にいる女子生徒のパンツを観たことを思い出した。

何も言ってこないけど、忘れてくれたよね? …ね?


俺の予想通り、簡単な事情聴取をすることになった。

俺1人なら厳しかったしれないが、女子生徒も同じ説明をしてくれたので

事情聴取は手早く終わった。証人は2人以上いたほうが、信憑性があるからな。



 事情聴取後、何故か横に並んで歩く俺と女子生徒。

目的地は高校で同じだから仕方ないけど、パンツのことを聞かれる前に退散したい。


そんな中、女子生徒が口を開いた。


「あの…、さっきあなたが私のパンツを見た事ですが…」


覚えてた。どうしよう? さっさと謝ったほうが良いか?

でもさ、俺は悪くないぜ。悪いのは風だし。


「うん」


「あなたが見てくれたおかげで、私助かったんですよ」


「…え?」

何を言ってるの? この子?


「最初はあなたの予想通り、文句を言うつもりでした。ですが、さっきの車のタイヤ痕を観たら、私が歩く先にあった。あのまま歩いていたら、私は轢かれていたんですよ。轢かれなくても、躱すために怪我はしたと思います。あなたが私のパンツを観てくれたおかげです」


パンツを観たらお礼を言われた。こんなの、前代未聞だろ。


「私のお母さんも、お父さんと運命の出会いをしたんです。暴漢に襲われているお母さんを、お父さんが助けたのがきっかけなんですよ」


その話とパンツを観た俺を同列にするのは違和感がある。

良い気分なので、指摘はしないけどさ。


「これも何かの縁です。良かったら、連絡先を交換しませんか?」

そう言って、スマホを出す女子生徒。


俺だって男だ。女子と仲良くなる機会があるなら、喜んで受け入れるよ。



 …連絡先を交換したが、この子の名前を知らないな。


さっきの事情聴取で、俺より1学年下の1年生なのは聞いたけど。


「そういえば、自己紹介してないよな。俺は2年の服部慎一はっとりしんいち。よろしく」


「私は1年の真壁由香まかべゆかです。よろしくお願いします」


こうして、俺と真壁さんの奇妙な関係は始まったのだ。

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