第57話 存続か廃爵か?
2組の夫婦が正気に戻ったよ。
「ゴメンね、トーヤくん」
いえいえ、大丈夫ですよ。ターナ
「悪かったね、トーヤくん」
心からお二人に喜んで貰えて良かったです。ナイヤ
僕もフェルもニコニコと2組の夫婦を見て気にしないでと首を横に振った。フェルは喋れるんだから口に出した方がいいと思うよ……
それから気を取り直してテルマイヤー家の処遇について話合う事になったけど、ハール様の提案に僕もフェルも戸惑ってしまったんだ。
その提案っていうのが……
「さて、フェルに質問がある。実家が無くなってしまってもいいかの? それとも存続させたいかの? 場合によってはフェルがあとを継ぐという方法も取れる。が、それだとトーヤが婿養子になる必要が出てくる。もう一つの方法は、テルマイヤーの名は無くなるが、ハイナイト家に吸収合併して存続させる方法もある。更にもう一つ、遠縁の者が降爵した状態で存続するという方法もあるのだが…… どうしたいか意見を聞かせてくれるか?」
僕は悩みながらもこう書いた。
【ハール様、もしも吸収合併するとしてもハイナイト家ではなく、フォグマイヤー伯爵家の方がいいんじゃないでしょうか? フェルよりもターナ
僕の書いた文章を横から読んでフェルもコクコクと頷いている。しかしそれにはリゲルさんとターナ
「ちょっと、待った! ハール様、家は子沢山なので領地は今ある領地を見るのが精一杯です!」
「アラアラ、ダメよ〜トーヤくん。私たちはコレからトーヤくんの領地に行って過ごす予定だから、実家を押し付けられても困るわ〜」
いや、だからって僕に押し付けるのも違いますよね、ターナ
「まあ、待て待て。今のはお互いの意思確認の為に聞いたのだ。で、フェルよ。実家がもしも廃爵になっても構わないという事かの?」
「はい、ハール様。私は既にハイナイト家に身も心も捧げるつもりですので。それに、実家とはいえあそこで過ごした期間は辛いことが多かったので……」
フェルはそう返事をして少し俯いた。僕はそんなフェルの手を励ますように握りしめたんだ。シッカリと握り返してくれたよ。柔らかいな〜、フェルの手は。ついニギニギしてしまった。
「むう、そうか…… ではターナはどうじゃ?」
「ハール様、私とても同じですわ。あの兄、姉たちを含めて両親にも家族だという気持ちはございません。例え廃爵になったとしても何とも思いませんわ」
ターナ
「そうか、2人の気持ちは分かった。ナイヤ殿の気持ちもな。全ては明日、陛下にご報告をしてからの事になるが、3人の気持ちは
ハール様のその言葉に僕たちは頷いたんだ。
そして、翌日。ナイヤ
「これで全てです。中身は確認しております。ですが、閣下ご自身でも確認をよろしくお願いいたします」
「固いのう、ナイヤよ。もう少し言葉を崩してもよいぞ。ココには身内しか居らぬからな。さて、では確認をしてから陛下に会いに行こうかの。皆は悪いが暫く我が屋敷で待機しておいて貰えるかの。各家には知らせを出すのでな」
さてと、いよいよだね。テルマイヤー侯爵家は寝耳に水で何の備えもしてないだろうけど、それを安心材料にしてコチラが油断する訳にはいかないからね。僕は先ずはハール様に腕輪を差し出したんだ。
「ん? トーヤよ、この腕輪はなんじゃ? じいじにプレゼントしてくれるのか?」
僕は頷きながら説明を書いた紙をハール様に見せたんだ。
【コレは身代りの腕輪です。1度だけですが、命の危機を身代りしてくれます。是非、今すぐ身に着けておいて下さい】
「なんとっ! そんな高価な魔道具をどうしたんじゃ? コレは国宝級の物じゃぞ!」
アレ? そうなのかな? 失敗したかな…… でも、フェルの分も、フォグマイヤー夫妻の分も、ナイヤ
「まあ! 私たちにも!?」
「コレは受け取れないよ、トーヤくん!?」
「一介の商人が身に着けていいものじゃない!!」
「これ以上はもう、トーヤ様……」
上から順にターナ
「皆様、私の婚約者であるトーヤからの気持ちですわ。どうかお断りにならずに身に着けて下さい。それがトーヤの心を喜ばせる事になりますわ」
僕はフェルの言葉にニコニコ頷きながら皆を見る。そして、先ずはハール様が
「ふぅー、孫に頼まれては断れんしの。それに、じいじは嬉しいぞ! そんなに大切に思ってもらっての!」
そう言って腕輪を装着してくれたんだ。ハール様が他の皆にも早く着けるのだと目で急かしてくれたから、皆も諦めて身に着けてくれたよ。
よし、コレで一先ずは安心だね。そして、ハール様はそのまま部屋を出ていった。書類の確認が終わり次第、王宮に向かい陛下とお話されるそうだ。
ナニワサカイ国の王族の方たちは、王太子殿下のご案内で王都を観光されるという話だから、陛下も時間が取れたそうだよ。
さて、どんなお話になるのかな……
ハール様が帰ってくるまでの間にナイヤ
僕は領地の代官であるロッテンと、街長であるローレンに話をとおしておくからと伝えたんだよ。ナイヤ
そして、一緒に話を聞いていたターナ
とても嬉しそうな顔をしてくれたから、僕も領地の宣伝をよろしくお願いしますと頭を下げたよ。
そうして楽しいひと時を過ごしていたんだけど、ハール様は夕方になっても王宮から戻られなかったんだ。それどころか、王宮から使者が来て僕たちに王宮に顔を出すようにって言われたよ。
何かあったのかな?
僕たちは急いで支度をして王宮に向かう事にしたんだ。そこで待っていたのは……
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