第47話 王妃殿下も?

 あれからルソン陛下をお迎えに物置に行くと、何と物置が拡張されてました……


「ワハハハ、どーだ? いい広さだろう? 私は空間魔法を使えるし、ちょうど馬車に魔石があったからセルフサービスで王族に相応しい広さに拡張したんだ! どうだ、見直しただろうトーヤくん?」


 僕的には凄いと思って頷いたんだけど、一緒に迎えに来たジーク兄さんにカーズ義兄にいさんが即座に否定をしたんだ。


「全く、子供かお前は! 家の者に了承なくそういう事をするなと何度言えば理解するんだ!」


 とは、ジーク兄さんの言葉。


「ハアー、誰が後始末をすると思ってるんです、陛下。侯爵、僕はちょっとセバスさんにお知らせしてきますね」


 とカーズ義兄にいさんが言って屋敷に入って行く。3分後、セバスとハレがカーズ義兄にいさんと共に出てきて、物置の中を見てルソン陛下に物申したよ。


「他国とはいえ王族の方に言うのは大変に失礼だとは思いますが、考えなしに行動されるのは慎まれるべきかと存じます」

 

 とセバスが言うと、ハレはもっと辛辣に、


「物置を元に戻していただけますか? その広さは必要ありませんので。5分以内にお願い致します。それと、コチラをプレゼント致します」


 そう言ってから、ルソン陛下に腕輪を有無を言わさずはめたんだ。で、その腕輪を発動させる前にルソン陛下に物置を元の状態に戻させてから、おもむろに腕輪の能力を発動させたんだよ。そう、魔力封じの腕輪を……


「なっ!! 魔法が使えん!! こ、これでは快適な【性活】が!!」


 ん、? 何となく生活の【生】の字が違うように感じたんだけど……


「おお、良くやったハレ。コレで空間魔法を使って侍女たちの入浴や着替えを覗けなくなった。一晩中見張る必要があると思ってたんだ、助かったよ」


 はい、それを聞いて僕もちょっと怒りましたからね、ルソン陛下。僕は何も言わずに笑顔で物置に結界を張ったんだ。扉を開くとトイレに直結するようにもしたし、ちゃんと【生活】出来ますよね。


「ト、トーヤくん、オジサンお風呂には入りたいかなぁ…… 何て……」


 何て言うから僕は満面の笑みで、でも目は笑わずに道具箱からタライにお湯を入れて置いてあげたんだよ。優しいよね。


「うんうん、それで十分だよ。トーヤくん。セバスさん、食事だけ持ってきてやってもらえますか? 出来れば男性に」


 と、カーズ義兄にいさんが言うとセバスが、


「畏まりました、我が家随一の使い手である、トウシローに頼みましょう」


 って答えていたよ。これで、今日、明日はここで過ごす事が決定したね、ルソン陛下。非公式訪問だから、我が国のケレス陛下と会う必要も無いだろうしね。たった2日の辛抱ですからね。


「トーヤくんの笑顔が怖い……」


 そのまま僕はみんなを連れて屋敷に戻ったよ。


「トーヤー、カムバーーーックッ!!」


 聞こえないフリを勿論、全員がしたよ。




 ジーク兄さんたちが来て2日目に、僕の領地へご案内だ。しょうがないからルソン陛下も一緒にだよ。勿論、腕輪はそのままだけどね。温泉街なんだから外すのは危険でしょ?

 

 馬車に乗ってやって来たんだけど門衛がちゃんと仕事をしているのを確認しながら街の中に入って行くと、カーズ義兄にいさんが、


「凄いね、トーヤくん。街のアチコチから上がってる湯気が温泉かな?」


 と聞いてきたので、フェルちゃんが僕の代わりに返事をしてくれたんだ。


「はい、お義兄にい様。街のこの辺りは旅人用の温泉宿屋になります。更にアチラの奥の湯けむりは領民が入る公衆温泉のものです」


 それを聞いて感心したように頷くカーズ義兄にいさん。それから僕の屋敷に着くと、カオリ義姉ねえさんとセティナ姉さんが声を揃えて驚いたんだ。


「セバスさんっ!?」「いつの間にこちらにっ?」


 ロッテンはちゃんと真顔のままで答えたよ。僕なら吹き出してるね。


「皆様、はじめまして。私はコチラでトーヤ様の代官としてこの街の治安を守っております、ロッテンと申します。王都では兄のセバスとお会いなされたようで、何か失礼が無かったかと心配でございますが、大丈夫だったでしょうか?」


 何てジョークも交えての挨拶に、2人の姉も顔を少し赤らめながら挨拶をしていたんだ。


 僕はロッテンにメモ用紙を渡して確認したんだ。


【王家専用には誰か来られてるかな?】


「はい、トーヤ様。2日前より、サラディーナ王妃殿下とセレス王太子殿下、並びにお連れ様がおふた方、お見えになっております」


 サラディーナ様がまた来られてるのか。セレス様まで…… お連れの方はどなたなのかな?

 と僕が思った時に、王家専用の温泉施設からコチラに誰かがやって来たようだよ。かなり声が大きいね。


「いや〜、サラちゃんがうらやましいわー。好きな時にここに来て入れるんやて? ウチもウチのボンクラのケツ叩いて作らさなあかんやん!」


「アラアラ、ダメよ。アカネちゃん、ご主人の事をボンクラなんて言ったら」


「えー、サラちゃんは知らんからそう言うんよ〜。ホンマにウチのはボンクラなんやで!」


 って聞こえてきた時に、とても静かで大人しかったルソン陛下が走って逃げ出そうとしたけど、ジーク兄さんとカーズ義兄にいさんに両腕を掴まれて動けなくなっていたんだ。


「ホラ、サラちゃん見てみぃな。アソコでウチの忠臣に固められてるのがウチのボンクラやで」


「まあまあ、ルソン国王陛下まで! いつの間にいらしてたの? それに、アカネちゃんの忠臣ってトーヤくんのお知り合いなの?」


「そやで。右手を抑えてるのがジークいうて、侯爵家なんやけど、トーヤくんの実の兄やね。左手を抑えてるのがカーズいうて、トーヤくんの実の姉のセティちゃんの旦那や。伯爵やねん。2人ともよう、私に仕えてくれてるんや。あの2人のお陰で2日前にこの王国に息子を連れて来る事が出来たんやで」


 そう言う貴女はナニワサカイ王国の王妃殿下なんでしょうね…… ルソン陛下の事を連れ合いボンクラって言われてるようなので。でも、お仕事政務は大丈夫なのかな? サラディーナ様のお連れの方は2人ってロッテンが言ってたから、もうおひと方は王太子殿下の可能性が高いと思うんだ。

 そんな思考はさておいて、えーっと、僕はご挨拶するべきなんやろうか? 


 しまった、思考の中で良かったけど、口調が写っちゃったよ……


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