第44話 1年経ち2年過ぎ……
あっという間に12歳だよ、僕。当初の予定ではこの年齢で「出ていけー!」って言われる事を想定していたけど、既に出てきてるし、ログセルガー公爵家は無くなってるし……
ログセルガー公爵家はスパイス伯爵家の
で、その後に屋敷内の捜索が行われて、家族総出での悪事がバレて…… その年の内に爵位剥奪となって、家にいた全員が平民となったんだ。
但し、既に家を出ていた3男のソール兄さんと、2女のセティナ姉さんは何のお咎めも無しだよ、勿論。セティナ姉さんは既に違う国に嫁がれているし、ソール兄さんに至っては居場所が王家の影でも分からないらしいからね。
セティナ姉さんには僕から連絡を入れたんだ。
【はじめまして、セティナ・アンブローズ伯爵夫人。私は貴女の実の弟であります。トーヤ・ハイナイト子爵です】
って固い文章で貴族らしい手紙を送ったら、
【親愛なる私の弟のトーヤへ】
って優しかった姉さんらしい文章で返事が届いたよ。その文面には、ソール兄さんも同じ国にいて、名前を変えてその国で侯爵になっていると書かれていたよ。
更には2〜3年後には会いに来るって書かれていたから、僕は領地の整備を優先して過ごしたんだ。
僕もフェルちゃんも学校からは卒業資格を既に貰って、来れる時に顔を出してくださいって言われてたからね。
そして、ログセルガー公爵家が無くなって明けて新年に、王太子殿下のセレス様と、
僕の
そんなお目出度い幕開けをしたその年の9月に、遂に領地の整備が終わって、街が完成したんだ。
僕は先ずはサラディーナ様に連絡をして、ご招待した。
で、サラディーナ様がまさか
で、その愚痴を止めて下さり、お肌に磨きがかかったサラディーナ様の鶴の一声で、僕の陞爵と王太子付参謀が決まったんだ。だから、今の僕はトーヤ・ハイナイト伯爵になったんだよ。そして、ハール・ロッテンマイヤー公爵の
そんな2人から聞いた話は、ロッテンマイヤー公爵家は代々、王家の影のまとめ役を勤めているそうで、ハール様が現在の責任者だそうだ。国が豊かになり、優秀な人材を在野から募っているそうだよ。というのも、元々は200年前までは秘密保持の為に貴族だけで構成されていた影組織だけど、ロッテンマイヤー公爵家だけでは手が足りなくなってきたので、分家でもあったテルマイヤー侯爵家と協力していたらしいんだ。50年前までは…… フェルちゃんの実家だね。
けれども、50年前に当時のテルマイヤー侯爵が影の役目を放棄してしまい、ハール様のお父上(当時の影の責任者)が、それならば在野からコレはと思う者を鍛えて任務についてもらおうと、四苦八苦しながらも今の形を作り上げたそうだ。
セバスもロッテンも元々は孤児で、ハール様に見込まれて8歳から鍛えられたそうだよ。で、ココが凄い所なんだけど、ハール様は鍛錬についてこれなかった者たちがこれまでに何人も居たんだけど、その者たちの適正を見て、就職先を斡旋していたそうなんだ。
ある子は10歳でやって来て、13歳で鍛錬について来れなくなった。その子はそのままハール様のお屋敷で執事見習いになって、現在は執事長をしているそうだし、またある子は2ヶ月で挫折したけれども、手先が物凄く器用だったので、細工職人に弟子入りさせて、今では王都で一番と言われる細工職人になっていたり…… って中々できる事じゃないよね。そんなハール様は実はロッテンにかなり期待されていたそうで、ロッテンの本名は違う名前だったけど、ハール様が今日から任務名としてロッテンと名乗れと仰ったその日から、本名を捨ててロッテンを名乗る事にしたそうだよ。家名の一部を優秀な部下に名乗らせるなんて、相当に期待していたんだろうね。僕が奪っちゃった形になったんだけど、怒ってないよね…… って2人に聞くと
「ハール様はトーヤ様のお力に感服しておられましたよ。温泉を見つけられた事もそうですが、時間がかかっても領地をより良くされる為に動かれている事に、とても10歳そこらの子供とは思えないと仰っておられました」
って教えてくれたよ。ホッとしたよ。
そんな話を聞いて僕はハール様にご都合の良い日をお尋ねして、お会いしてきたんだ。そして、
「おおー、トーヤ殿。良く来てくれた。私の孫と同じ年だが、どうだね、いっそ孫にならんかね?」
って大歓迎を受けたんだよ。でも、養子なら分かりますけど、養孫って本気ですか? って思ったのは内緒だよ。
それから、ハール様は僕に頼み事があるって仰ったんだ。ロッテンマイヤー公爵領には現在嫡男のトール様がおられるそうなんだけど、領地でも熱いお湯が湧いている場所があるらしく、温泉の専門家として王家から見られている僕に、人体に悪影響が無いか調べて欲しいって言われたんだ。
勿論、僕は快諾したよ。何やら卵が腐ったような匂いがするって仰ったから、コレは硫黄泉だと分かったからね。ロッテンマイヤー公爵領は王都からだと馬車で3日の距離にある。直ぐには無理だけども、早めに日にちを決めて行ってまいりますとお伝えしたよ。筆談だけどね。
で、そのお話が出た時にハール様に湯治にウチの領地に来られませんかとお聞きしたんだ。そうしたら、
「おお! それは良いな。ついでだからサカキ侯爵家とガルン伯爵家、スパイス伯爵家に王太子殿下にその婚約者のターメリ嬢も一緒に行こう! なーに、私から連絡を入れるから心配ない。日にちはそうだな、明後日に出発としようじゃないか!! フーム、こりゃあ、楽しみが出来た!!」
と物凄い喜びようだったよ。しかし、そんな急に明後日に出発って言ってみんなが動けるかなぁと僕は心配したんだけど、みんな、即座に仕事を片付けて動きました…… 更には話を聞きつけたサラディーナ様の再来訪も決まったとか……
で、僕の屋敷内に王族専用とは別に作った、客人用の温泉を堪能してもらいました。ハール様に至っては庶民用の公衆温泉にまで入りにいき、そのまま前世の居酒屋を真似て作った飲み屋さんで呑んで屋敷に帰ってくる始末…… この人本当に公爵家当主ですか? 僕の父とは別の意味で疑ってしまったよ。
で、また、国王陛下からの愚痴を延々と聞かされそうになった時に、ハール様が
「陛下、トーヤ殿には火急の調査を依頼しておりますので、これで御前から失礼しますぞ!」
って言って僕を連れ出してくれてんだよ。うん、頼りになるお祖父ちゃんだね。
それから僕はロッテンマイヤー公爵領に行き、(勿論、フェルちゃんも一緒だよ)トール様と一緒に源泉に向かい、硫黄泉の確認をしてその効能なんかをご説明したんだ。そして、ウチの領地の街を整備してくれた職人たちをご紹介して、ウチの領地よりもかなり広いから時間はかかるだろうけど、領地に温泉を引く手助けを約束したんだよ。
そちらは今も工事が続いているよ。
そうして、12歳になった僕は充実した毎日を過ごしていたんだ。
で、ソール兄さんとセティナ姉さんからの手紙が届いて、2週間後にこちらに来るって連絡があったんだ。
ソール兄さんには会った事がないけど、セティナ姉さんは1歳になる前に会いに来てくれてたから覚えているよ。僕はその日を楽しみに待っていたよ。
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