第37話 レッツゴー呪われた泉!
結局、良い案は思いつかないまま、片付けも終えた僕たちは、ローレン村長にお願いしたんだ。
「何と! 呪われた泉に行かれるおつもりですかっ!?」
そんなにビックリしなくても…… 王家の公式見解で人体に悪影響のある、物質も魔力も出てないって教えてもらってる筈でしょう? 僕が目でそう問いかけると、察しが良いローレン村長が、
「しかし、あそこには魚が居ないんですよ! 魚も住めない環境なんて呪われているとしか…… しかも、熱い湯が地中から湧くなんて事がおかしいでしょう!?」
そう言ってきた。いや、熱いから魚が居ないんですよ。どうも、ローレン村長は呪いを信じてるみたいだから、案内を頼むのは無理みたいだなぁ。そうだ! レイさんに頼んでみよう!
僕が名案を思いついた顔つきをしていたのだろう。フェルちゃんが直ぐに気がついて頷いた。
「そうですねトーヤ様、ローレン村長はお仕事もあるでしょうし、サラディーナ様にお願いしてレイ様に頼んでみましょう」
「私の娘をそんな危険な場所の案内に……」
あ、ローレン村長が困ってるけど、ねぇ……
「ローレン村長、私たちも無理強いは致しません。頼んでみてレイさんが承諾されたら、案内をお願いする事にします。今からお願いに行きますから、ローレン村長も一緒に来てもらえますか?」
フェルちゃんからの言葉に渋々とだが頷く村長を連れて公共所の中に入る僕とフェルちゃん。泉を見に行く時はロッテンには村に残って貰って、レミさん、セラス、ナーガ、メレンは連れて行くつもりだから、準備を頼んでおいたよ。
公共所の中に入るとサラディーナ様と話をしているレイさんを見つけた。けれども、サラディーナ様との話が終わるまで待つ事にしたんだ。いくら僕でも王族の方との話を遮る勇気は無いからね。
そしたらサラディーナ様が僕たちに気がついて手招きしてくれたので、2人の元に向かったんだ。
「どうしたの? 2人とも」
サラディーナ様の質問にフェルちゃんが答える。
「はい、今から呪われた泉に視察に行くつもりなのですが、ローレン村長は村での仕事があるそうなので、レイさんに案内をお願いできないかと思いまして。よろしいでしょうか、サラディーナ様?」
「まあ、それなら私とヨーナも一緒に行くわ。レイ、メイド2名と騎士1名でいいわ。案内してちょうだい」
鶴の一声が飛び出てアッサリとレイさんが案内してくれる事になったよ。ローレン村長はレイさんに何か話しかけてるけど、レイさんの返事は
「王家直属の調査隊が調べているんだから、大丈夫よ、お父さん」
だった。それでも不安そうにしながら仕事をしに行ったローレン村長。ちゃんと娘さんの無事は保証しますからね。その背中に僕は心の中でそう声をかけたんだ。
そしていざゆかん! という時にレイさんが言いにくそうにサラディーナ様に言った。
「サラディーナ様、実は呪われた泉は2ヶ所あります。そして、2ヶ所とも馬車では行けません。徒歩で15分程の距離になりますが、歩かれますか?」
「勿論よ、レイ。ヨーナも歩くわよ」
まあ、そりゃ道なんか作らないよね。村の人は呪われてるって思ってるんだがら。
それでも、全員が歩いて行くからか、
「着きました。トーヤ様、こちらが近い方の呪われた泉です」
おおっ! 湯気が出てるよ。硫黄臭くないから、何温泉かな? 僕は
【弱アルカリ性単純温泉】pH7.7 源泉58℃
自律神経失調症、不眠症、うつ状態などに効果あり
えっ! 情報はコレだけ? 少ないなぁ…… もうちょっと何かあったような気がするんだけど…… 取り敢えず出た情報をノートに書いておく。
そして、レイさんにもう一つの泉に案内してくださいと、頷きと目線でお知らせする。でも、レイさんは慣れてないから分からないようだ。
「レイさん、もう一つの呪われた泉はここから遠いのですか? トーヤ様がこの泉の必要な情報は揃ったようですので、もう一つに行ってみたいそうなんですが?」
さすがはフェルちゃんだね。ちゃんと僕の意を汲んでくれたよ。
「あ、そういう意味だったんですね。スミマセン、気がつかなくて……」
済まなさそうにレイさんに言われたので、僕は手と首をブンブンと横に振って気にしないでと伝えた。それは伝わったみたいだよ。
「はい、有難うございます。それではもう一つの泉に行きましよう。ここから西に150メートルほど行けばありますので」
人が一人通れる程の道が西に向いて続いている。それを進むと今度はさっきよりももう少し大きい泉があったんだ。
よーし、直ぐに
【塩化物泉(主カルシウム)】源泉68℃
切り傷、抹消循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症などに効果あり
飲用する事で、萎縮性胃炎、便秘にも効果あり
やっぱりコレだけかぁ……
僕は
そこで僕はハッと気がついたんだ。今まで一度も出番の無かった【知識箱】!!
そうだ、調べてみよう!
【温泉】
✱塩化物泉
美肌の湯。熱の湯。
きりきずの痛みを抑える。
血液の循環を促進させ殺菌力が強く、痛みを抑える鎮静作用があると言われる。
末梢循環障害・冷え性の改善
肌に薄い膜が貼られて水分の蒸発を防ぐため、血液循環が良い状態が長く続く。湯冷めしにくく末梢循環障害や冷え性の改善によいとされる。
皮膚乾燥症の改善
入浴による乾燥を防ぎ、しっとりとした肌になると言われている。
塩化物泉には、特別な禁忌症はない。妊婦や赤ちゃんも入浴が可能。
…………以下略。
物凄い情報が頭を駆け巡って行ったよ…… コレは危険だ。慣れるまでは使うのを控えようかな?
でももう一つの方の情報も欲しいから、頑張ってみよう。
✱アルカリ性単純温泉
美肌の湯。
古い角質を洗い流し、新陳代謝を促進。
さらにくすみを除去し、ツルツルの肌へ。
乾燥肌の人は保湿が必要。
おお、美容に絞って調べたらちゃんと出たよー。
僕はそれらをノートに記入して、取り敢えず帰ろうってフェルちゃんに伝えた。
「トーヤ様、収穫はありましたか?」
フェルちゃんに聞かれたから、笑顔で頷いたよ。更にサラディーナ様からも質問が出たよ。
「トーヤくん、どうにかなりそう? この泉を利用出来るの?」
と聞かれたから、それにも大きく頷いたよ。
「まあ、それじゃ明日か明後日にでも教えてくれるかしら?」
サラディーナ様がそう言ってきたので、僕はノートを示して、まとめる仕草をしたんだ。その後に指を2本立てて前に出した。
「そう、明後日までに、まとめてから報告してくれるのね」
おお、サラディーナ様にも通じたよ。僕たちは取り敢えず公共所に戻る事にした。夕食まで時間はまだあるけど、準備もしたいからね。
さあ新領主として、領民に夕食も楽しく過ごしてもらおう。
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