第9話 新しい住居は快適そうだ
あれから、フェルちゃんもウチの馬車に乗ってもらい、テルマイヤー侯爵家に行ってテルマイヤー侯爵に書類を見せたらアッサリと了承された。どうもウチでの僕の扱いと同じで、フェルちゃんを認知だけして後は放置している感じだった。
だから、そのままレミさんを呼びに行き、フェルちゃんと一緒に馬車に乗って貰い、僕の物になった新しい屋敷に向かう。
屋敷に着くと門番がちゃんと居た事に先ず驚いた。門番は6名いて、どうやら亡き母の護衛騎士をしていた人で、母亡き後にいつか僕を守れるようにと歯を食いしばって公爵家に仕えてくれていたそうだ。思わず泣いて(声は出さずに)一人一人に抱きついたよ。6人とも僕と同じく泣きながら、コレからは何があろうともお守り致しますと言ってくれた。
更に、屋敷の玄関に着くとハレを筆頭にメイド達が入り口前に勢揃いしていた。その数、何と10名。ハレとその娘であるセラス。そして親衛隊なる隊員の5名で7名の筈だけど……?
ハレが僕に向かって説明してくれた。
「トーヤ様、本来ならば私と娘を含めた親衛隊7名がこのお屋敷にお勤めさせていただく筈でしたが、コチラの3名が泣きながら私達に訴えてまいったのでございます。この3名は公爵家のご嫡男であらせられますテルマー様付のメイドでしたが、このままでは貞操の危機でございました。この3名は下級貴族の令嬢で、迫られると断る事が出来ません。ですので、コチラのセバス様にご相談したところ、旦那様に直談判してくださいまして、このお屋敷に勤める事となりました。3名ともトーヤ様に心より感謝しております。どうか、よろしくお願い致します」
そう聞いてハレの横を見ると確かにセバスが居る? アレ? セバスは馬車の御者をしてくれてるよね? さっき、馬車を馬車停めに持って行って来ますって僕に言ったよね?
僕の不思議顔が面白かったのだろう。こっちのセバスは笑いながら僕に挨拶してきた。
「ハハハ、初めてお目にかかります、トーヤ様。兄から聞いているとは思いますが、私が双子の弟で、そうですね…… 仮にロッテンとでも名乗っておきます。以降、お見知りおきを……」
いや、無理。こんなにソックリだと見分けがつかないよ。そう僕が思っていたら、リラがまだ繋いでる僕の手を通じて心話してきた。
『トーヤ〜、大丈夫だよ。魔力を視てたらセバスさんと違うのが分かると思うよ』
言われて視てみたら本当だ!? セバスとは魔力が違うのが分かった。リラの【頭脳明晰】は本当に凄いなぁ。僕はリラにニコニコと頷いてみせた。
そんな僕とリラの様子を見てフェルちゃんが言った。
「あの…… やっぱり私がトーヤ様の婚約者なんておこがましいのではないですか……?」
それを聞いてリラが吹き出した。
「プッ、アハハ、フェルちゃん〜。ちゃんと言ったと思うけど、私はトーヤのお姉ちゃんだから心配しないでね」
うん、分かってたけど、ハッキリとリラにそう言われるとちょっと落ち込んでしまう僕がいる。けれどもそれはしょうがないよね。リラがその気が無いならば、僕はどうしようもないんだし。
そう思い、僕もフェルちゃんにニコニコと頷いてリラの言葉通りだという意思表示をした。
それを見てホッとした顔をするフェルちゃんとレミさん。そして、ハレがレミさんに言った。
「貴女はフェル様の侍女ですね。コチラのセラスをフェル様付に致しますので、どうかご指導のほどよろしくお願いします」
そう言って自分の娘であるセラスさんを指し示す。言われたレミさんは慌てて挨拶をする。
「名乗り遅れて申し訳ありません。フェル様付の侍女でレミと申します。私の方が色々とお教えいただく事になるかと思います。どうかよろしくお願い致します」
「フェル様、レミさん、この屋敷のメイド長、ハレの娘でセラスと申します。このお屋敷では色々と侯爵家での作法とは違う事もあるかと思いますが、どうかこれからよろしくお願い申し上げます」
うん、そろそろ家の中に入りたいなぁ…… 僕がそう思っていたら、家の玄関が開いてガルンさんとラメルさんが顔を出した。
「トーヤ様、おかえりなさい」
「トーヤ様、この度は主人やリラ共々、私達をお雇い頂きまして、本当に有難うございます」
先の言葉がガルンさんで、後の言葉がラメルさんだ。良かった、ちゃんと二人ともコッチに来ていたよ。リラも安堵している。そして、ラメルさんを見てレミさんが声をあげた。
「ラメル様っ!!」
レミさんがあげた声の方をラメルさんが見て、同じように驚いた声をあげた。
「まあーっ! レミ! 貴女も無事だったのね、良かった……」
「レミ、この方がアナタが言っていたラメル様なのね」
フェルちゃんがレミさんにそう言うと、
「はい、フェル様。コチラの方が前獣人王のご息女であるラメル様です」
その言葉が僕に聞こえた。エッ!? ラメルさんって王族なの…… 僕は王族の
僕の思考が一瞬停止した。
「レミ、いえレミさん。私はもう王族じゃないから、敬語で話すのは止めてね」
「ハ、ハイ。でも落ち着きましたら是非お話を……」
「勿論よ、コレからはトーヤ様の庇護のもと、一緒のお屋敷で生活するのだから」
ニッコリと微笑んでそう言うラメルさん。そして、何故か苦い顔のガルンさん。そのガルンさんを見てレミさんが言った。
「兄さん、兄さんも後でお話がありますから。コレから時間は余裕がありそうですし、タップリと聞かせて下さいねっ!!」
おうっ! ガルンさんの妹さんだったとは。世間は狭いなぁ、なんて前世では良く聞いた言葉を僕は思い出していたんだ。
そこにセバスが戻ってきた。
「何だ何だ? ハレが居ながら何でまだお屋敷前に立っているんだ? 早く中にトーヤ様とフェル様に入っていただかないか」
その言葉にみんながハッとして、申し訳ありませんといいながらも、屋敷の中に入るよう促してくれた。ハア、色々とあったけど皆が僕やフェルちゃんを支えようとしてくれているから、この屋敷では快適に過ごせそうだよ。
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