第7話 テルマイヤー侯爵家

 僕とリラを連れて神父さんについていくセバス。手を繋いでるから心話で会話をしているんだ。


『トーヤ様、申し訳ございません』


『えっと…… 何が?』


『フェル様の為に動く事になる件です』


『僕がいいって決めたんだから、セバスが気にしなくてもいいよ。でも、セバス時間は大丈夫? 本邸に戻らないとダメなんじゃないの?』


『ああ、それについては大丈夫です。私の双子の弟が上手くやるでしょう』


『えっ!?』 『エーッ??』


 先が僕で後がリラだ。双子の弟ってどういう事?


『おお、そう言えばお伝えしておりませんでした。私には双子の弟がおりまして、旦那様は見分けがついてないので偶に入れ替わっております。が、一度もバレた事はございませんので。弟は人様に言えない特殊な職業についておりましてな。割と自由がきくので時々こうして頼んでおります』


 衝撃の事実だぁ。まさかセバスが二人居るなんて知らなかった。ひょっとしたら3歳の時に来たセバスは弟の方だったのかな? なんて考えていたら、セバスがトーヤ様にお会いする時は全て私自身ですと、僕の心を読んだかのように言ってきた。


『それで、それで、セバスさんの弟さんのお名前は?』


 リラがセバスにそう聞いている。


『リラ、弟の名前は言えないんだ。特殊な仕事をしているからね』


『そっかー、残念だなぁ〜』


 そんな会話をしていたらどうやら部屋にたどり着いたようだ。


「セバスさん、少しお待ちいただけますか?」


 神父さんはそう言ってセバスが頷くのを確認してから部屋に入っていった。待つこと30秒で出てきて、僕達に部屋に入ってくださいと告げて去っていく神父さん。


 僕達は素直に部屋に入る。その際にセバスが僕に言う。


『トーヤ様、場合によってはトーヤ様の身分を証してもよろしいでしょうか?』 


『うん、構わないよ。身分って言っても何の権限もないけどね、ハハハ』


『いえ、そのような事はございません。幸いにも旦那様が認知しておりますので』


『分かった。その辺はセバスがいいようにして。任せるよ』


『ハイ、お任せください』


 部屋からフェルちゃんと神父さんが座っているソファまでの短い距離でここまで打合せを済ませた。勿論、リラにも聞いて貰ってたよ。 


 二人の前にたどり着いたセバスが声をかけた。


「何やらお困り事ですかな? 私でよろしければ相談にのりますぞ」


 セバスの言葉にホッとした顔をする二人。神父さんが先ずは話しかけてきた。


「取り敢えずお掛けください。そして助かります、セバスの兄貴。コチラはテルマイヤー侯爵家の四女でフェル様と言います。実は、フェル様はお姉さん達に騙されてココに連れて来られたようなのです。本来ならば貴族街にある教会で受ける筈だった神儀式ですが、長女であるメイ様と次女であるカロリーナ様がウチが貴族街の教会そうだと嘘を吐いて、しかもフェル様を置いてお帰りになったようなのです……」


 うん、色々気になるよね〜。僕もリラも大いに気になったのが、神父さんがセバスの事を兄貴あにきって呼んだ事かな…… 一瞬だけセバスから殺気が漏れ出たよね。 

 まあ取り敢えずはフェルちゃんの事だね。僕はセバスに触れて心話を送った。


『取り敢えずテルマイヤー侯爵家までフェルちゃんを送ればいいのかな?』


『はい、先ずはそこのところを確認してみます』


 因みにリラはずーっと僕の手を離してないから、この心話はリラにも聞こえている。


「それで、私どもはフェル様をテルマイヤー侯爵家までお送りすれば良いのですかな?」


 セバスがそう言った瞬間にフェルちゃんが、


「イヤッ!!」


 と大きな声を出した。それに思わずビクッとなってしまったよ。ビクッとなった僕とリラを見てフェルちゃんが、済まなさそうな顔をして言った。


「あ、驚かせてゴメンなさい……」


 ウンウン、何か帰りたくない事情があるのかな? 僕はセバスをチョンチョンと突く。心得たセバスがフェルちゃんに聞いた。


「フェル様、お帰りになりたくない事情でもございますか? よろしければ私どもにお話してくださいませんか?」


 セバスが優しくそう聞くとフェルちゃんはポツポツと語り始めた。


「私はテルマイヤー家の四女として産まれたけれど、父が無理やり産みの母を襲って出来たんです。母は2年前に亡くなりました。母が亡くなってから、姉や兄達から蔑まれ、疎まれています。部屋は使用人の部屋を与えられて、食事は1日1回あれば良い方なんです。数少ない味方はお付の侍女をしてくれてるレミですが、獣人の為にレミも他の侍女達からいじめられています…… 私はレミと一緒に家を出たいのですが、まだ5歳なので……」


 ウオイッ! 何処かで聞いたような話だと思ったらフェルちゃんは僕と似たような境遇だったのね。  

 まあ、僕は兄上達に会った事もないけど。コレは何とかしてあげたいけれども…… 僕はそう考えていたけれど、セバスが僕に触れて心話をしてきた。


『トーヤ様、お力をお貸し願えますか?』


『何か手がある? フェルちゃんの現状をどうにか出来る?』


『はい、何とか出来るかと思います。フェル様が承知されればのお話になりますが……』


『分かった、僕には思いつかないから、セバスに任せるよ』


 そして、心話を終えたセバスがフェルちゃんに言った。


「フェル様、ご婚約されるつもりはございませんか? 私がお仕えしているログセルガー公爵家にフェル様に相応しいご子息がおられます。勿論、お顔合わせをして気に入らなければお断りして頂いても構いませんので。と、ソレは私の一存では決められないとお思いでしょうが、ソコは私を信じていただければと思います。勿論、ご婚約後に行儀見習いとして、その侍女の方もご一緒にお連れくださる事が可能です」


 イキナリなセバスの言葉にフェルちゃんだけじゃなく、僕もリラも神父さんもビックリしている。


 エットそれって…… ひょっとしたら僕となのかな……?

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