◉私の幸せのカタチ。〜ルーチェ・ガルトラム〜(⚠︎はちみつレモン味)

「シンテメ・ドアケウ・ネンマシオ.....」


 私はそう唱えながら、《手伝って》と願う。

 すると、足元の花の蕾が僅かに揺れて、ゆっくりとその花弁を開いていきました。


「やったぁ!出来た!」


 植物魔法。アキサメさんは〈優しい魔法〉だと言ってくれた。


 お花を咲かせただけど、確かな手応えに心が温かくなります。

 本当は、もっと凄い事が出来る魔法で、植物を操って敵の動きを阻害したり、攻撃したり。

 でも私には、少し難しくて。


 半端者のハーフエルフの私には、碌に魔法を使うチカラなんか無い。

 それは、少し前まで周りの人達から言われ続けてきた事。

 そして私自身も、そう思って生きてきました。


 でも、アキサメさんと出会ったあの日、私は変わりました。


 〈天使の祝福〉というハンドクリームが、

 天使様が私を祝福してくださって。


 オッドアイ嫌な記憶が綺麗な翠玉色に塗り替えられた時、


『良く頑張りましたね、ルーチェさん』


 私に届いた、優しい、包み込むような温かい言葉が、これまでの私を認めてくれて、救ってくれました。


 アキサメさんと頑張った〈気まぐれ猫〉の営業とハンドケア体験も。

 新しく出来た家族のレオンお父さんとサーシャお母さん、リズちゃんとの出会いも。

 アキサメさんの振る舞った美味しいケーキも。

 ロイロちゃんとの出会いや、夜長飯を囲んだディナーも。

 私達の住む都市を襲った脅威に立ち向かうレオンお父さん達を救ってくれたのも。

 そして、今。家族旅行を楽しんで過ごせるのも。


 全部、アキサメさんのお蔭です。

 もっともっと、沢山あるんですけどね。


 あの日から、楽しいがいっぱいで、

 嬉しいが溢れてて。

 みんなが笑顔で、『幸せだ』って言う。

 私だって、『幸せです』と笑う。

 アキサメさんは、『皆が頑張ってるのを、天使様がちゃんと見てくれているのでしょうね』と微笑むだけ。


 アキサメさんって、凄いな。


 私も、アキサメさんみたいに優しくて強くて魅力的な人になりたい。

 そう言ったら、アキサメさんはキョトンとした後に、笑って。


『ルーチェは、誰隔てなく接する事が出来る優しい心と、決して諦めない力強さを持った、魅力的な淑女レディですよ、今も、昔も。

 出会った頃から既に、ルーチェはそうでしたよ』


 ドキドキしてしまった私は、たぶん顔が真っ赤になってたと思います。

 そんな恥ずかしい事を躊躇わずに言葉にするのは反則ですよ、アキサメさん。


 きっと、エリス様もカメリアさんも。

 そして、私も。




「おや、ルーチェ。植物魔法が成功したんですね?」

「は、はい!ちゃんとお花が咲きましたよ、アキサメさん」

「素晴らしい!良く頑張りましたね、ルーチェ」

「えへへ。ありがとうございます!」

「やっぱり、〈優しい魔法〉ですね、植物魔法は」

「ちゃんと〈お願い〉したら、応えてくれました!アキサメさんが言ってた通りです!」

「ふふふ。確かに私がそう言ったかも知れませんが、ちゃんと魔法が発動したのはルーチェの優しさが伝わったからですよ」

「それでも、ありがとうございます、です!」

「それでは、どういたしまして、ですね」


 2人でそう言って笑い合うと、とても幸せな気持ちになります。

 私は本当に、本当に。

 幸せ者なんです。

 幸せのカタチは人それぞれだと、アキサメさんは言いました。


 私の幸せのカタチは、

 黒髪黒眼の年齢詐欺な童顔で、

 人を幸せにするのが趣味で、

 異世界から来た自称商人で、

 私の救世主で、

 側にいると温かくって、

 優しい気持ちになって、

 まだまだ沢山良いところがあって、

 とっても素敵なカタチ。


 大好きです。


 出会ったあの日から、ずっと。


 これからも、ずっと。


「ルーチェ、3時のおやつを用意しますから手伝ってくれますか?」


 お側に居させてください。


「はーい!今行きます!」


 ねぇ、アキサメさん。

 

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